甘ったるいタバコの匂い
zol
完結
やけに赤いリップを付けて、髪は金髪でショート。目立つような奇抜な服を着ていて、他の女の子よりも身長は高くて、タバコ臭くて、サバサバしている。僕の好みのタイプとはかけ離れていたけど、気づいたら好きになっていた。そういえば、彼女からは甘ったるいタバコの匂いがしてたな。
当時付き合ってた彼女に振られて駅前の公園で泣いていた時、君は僕に話しかけてきた。低い声と奇抜な服にびっくりしたのが最初だった。無言で1本タバコをくれた。タバコは吸わない主義だったけど、あの時だけは泣きながら煙が肺に入ってくるたびにむせた。君は僕が泣いている理由も聞かずむせている僕を見て笑ってた。あと30分で終電だったけど一杯だけと言い2人で安い居酒屋に入った。終電の時間が過ぎても僕の女々しい失恋話を自分の事のように悲しそうに聞いてくれた。終電の時間はとっくに過ぎていたけど、そんなことはもうどうでもよくなるくらい僕は出会ってすぐの君に夢中になっていた。気がついたらホテルに向かっていた。今まで付き合った人以外の人とそういうことをした事がなく酷く緊張していた。やる事をし終えた後君は僕に言ってきた 「こういうの初めてなんだけどさ、私が幸せにしてあげたいって思った」 「そんなやつ忘れて私と付き合お」 僕は照れながら言った 「僕も思ってた」 その後はもう一度して2人で一緒に寝た。朝起きたら彼女はまだ寝ていてその寝顔が小さな女の子みたいな無邪気さがあって可愛かった。付き合ってて気づいた事は、彼女は見た目の割に怖いものがだめで、ホラー映画を2人で見た時は終始僕の袖で目を隠していた。自分の好きなことを嬉しそうに話すこと、僕の話を微笑みながら聞いてくれる所が僕だけに見せてくれているみたいで嬉しかった。付き合って1年半が経ったくらいから些細な喧嘩が増えた。小さな喧嘩は次第に大きくなり何回か別れ話も出た。彼女がふとこんな事を言った「大好きなんだけどね、好きなだけじゃ難しいんだね」最初に泣き出した方は彼女の方だった。僕も泣きながら言った 「なんで最近上手くいかないんだろうね。 前まではあんなに楽しかったのに」なんで喧嘩になるか話をしたら彼女が胸の内を明かしてくれた。彼女は極度に嫉妬をしてしまうらしくて、僕が大学に行っている時は毎回不安になっていたと言う。もう限界まで来ていて僕に打ち明けたと言った。「ごめん、私の勝手だけど別れたい」そう言う彼女の目には涙が溢れていた。彼女の事だから一生懸命に自分なりに考えて、勇気を出して言ったのだと思った。初めて彼女の泣き顔を見たのはその時が最初で最後だった。僕は彼女を必死で止めようとしたけどもう何を言っても遅かった「優しくて、私の事をよく考えてくれて、私の欲しい言葉を欲しい時にくれる、 本当に私には勿体ないくらいの良い彼氏だったよ」「でも、優し過ぎる所が好きだったし嫌いだった」「私がもっと器の大きい人間だったら良かったんだけどね。私は二十歳過ぎてもまだ子供だったみたい」「今までこんな私と付き合ってくれてありがとう大好きだよ」そう言うと彼女は家を出て行った。いつもは 「またね」なのに今日は 「ばいばい」だった。1人残された部屋はやけに広く感じて虚無感に駆られた。彼女との過ごした日々を思い出しては泣いて、涙が止まらなかった。それくらい大好きで本気の恋愛だった。彼女は、換気扇のあるキッチンで小さな椅子に座ってよくタバコを吸っていた。まだそこには吸殻とライター、タバコがあってまるでさっきまでそこにいたかのような錯覚を起こす。タバコを吸わない僕が、いつの間にか彼女のタバコの匂いが好きな匂いになっていた。彼女が置いていったタバコを吸うけどやっぱりむせた。何度もむせながら僕は泣いた。
甘ったるいタバコの匂い zol @zaoldyeck
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