校内一の美少女と言われる私は男なんです〜ノーマルの俺にはハードルが高いが頑張って乙女を極めんとする〜
葉月さとし
第1話 プロローグ
夏休みが終わり、登校初日の朝の教室というのは独特な雰囲気に包まれる。
耳を澄ますと、かったりーだとかまじ学校きたくなかった、早く冬休み来ねぇかなぁなど負の感情が籠った声もあれば、久しぶり〜皆んなに会いたかった! 早く学校来たかった〜、みたいな声も聞こえる。
僕はどちらかと言うと学校に来たくなかった派で、これから毎日退屈な授業があるのかと思うとげんなりする。
夏休みも過ぎればクラスのほとんどの生徒たちは学校生活にすっかり馴染んでいる。もちろん僕だって馴染んでいるのだが、夏休み気分がなかなか抜けない僕は窓側後方に位置する自分の席に座りひとりぼーっとして過ぎ去った夏休みに耽っている。
そんな僕に声がかけられ振り向く。
「おーすっ。昨日はありがとな」
「……おはよう。別にあれくらい大したことないよ」
挨拶をくれた木下に応える。木下とはオンラインゲーム仲間で昨日も一緒に遊んでいた。こいつは結構律儀な奴でゲーム内の出来事でも学校で会ったら礼を言うのだ。
「ところでお前の後ろに席があるんだけど、なんで?」
木下が親指で指しながら尋ねる。
「んー、わかんね」
僕は正直に答える。そう、何故か知らないが夏休み前にはなかった机と椅子が僕の後ろにあるのだ。自分の席に座る前に間違ってそっちに座ったのは内緒だ。
「なんだ知らないのか。おーい誰かこの席知ってる人いるかぁ?」
木下は周囲に聞こえるように大きな声を出して聞いたが、皆知らないと返事が返ってくる。
「これはもうあれだ! 転校生!」
木下がキラキラした目で言ってきた。
「それは無いんじゃないの? 誰も知らないようだし、それに普通に考えて夏休み明けすぐに転校生がくると思う?」
「むぅ、ゲームではその可能性が一番高い!」
なんと悲しい思考なのだこいつは。ここはゲームの世界じゃないのだからそんな展開はあるはずがない。大方この教室でオープンキャンパスの説明会とかで使用したときに片付け忘れたに違いない。
それにこの高校は人気があるので編入試験も難しいと聞いている。僕も一生懸命努力してやっと入れたくらいだ。そんなあほ木下にささやかだけと冷たい視線を送ろう。
そんな中ホームルームを知らせるチャイムが鳴り、木下を含め各々おしゃべりしていた他の生徒たちも自分の席に戻っていく。当たり前にチャイムが鳴ったらちゃんと席につくあたりが優等校だと感じる。やはり義務教育のエリア分け玉石混淆の中学とは違うのだよ。
しばらくすると担任の先生がおはようと言いながら教室に入ってきた。いつもなら教卓に立ってすぐ出席をとるのだが夏休み明け初日が影響してなのか、今日はいつもと少し雰囲気が違った。
「みなさん、名残惜しいですが夏休みは昨日で終わりました。今日からまた学校の始まります。気持ちを切り替えて勉学に励んでください。それと今日は皆さんにお知らせがあります。……沙月さん入ってきて」
ガラガラと教室の扉が開く。
その姿を見て、僕は目を奪われた。
艷やかな黒髪、制服から覗く白く透き通るように美しい肌、すらりとした美麗な身体、そして均整のとれた顔立ち。
沙月と呼ばれた少女が教室に入ってくる。歩く度に黒髪が肩に当たってふわふわと踊り可愛らしく思う反面、上品に歩くその姿は凛としていて綺麗この上ない。
……控えめに言って美人。
「では皆さんに紹介します。まずは自己紹介から」
先生はそう言って場を譲る。
「はい、
ぺこりと頭を下げた際に黒髪がサラサラと流れる姿にドキッとする。
男連中は大体思う事が同じらしく、いつもの軽いノリで口出しをする奴らも夢見心地の異常状態でちょっかいを出すことを忘れているようだ。女性陣は何故かわからんけど無言になっている。
「沙月さんは今まで体調不良で自宅療養していましたが、今日から復学します。みなさん仲良くしてあげる事。では沙月さんの席は後ろに空いてあるところね」
はい。って言って沙月さんは移動し始めた。空いてる席って……ぼぼぼ、僕の後ろだぁぁ!
僕のもとへ向かってくる。違う違う! 後ろの席にだ! だ、だめだ、直視できない。
そんな心情置いてけぼりに沙月さんは僕の横を通り過ぎ、後ろの席に座った。隣の席の女子が小声でよろしくね。って声をかけた声が耳に届く。
うちのクラスに休学している生徒がいたなんて初耳だ。しかもとびきり美人! 後ろの席にいると思うとテンション上がる〜!
夏休み明けの憂鬱な気持ちが一気に吹き飛んだ僕だった。
--------------
最後まで読んでいただき感謝いたします。
初投稿です。
次話も読んでいただけると嬉しいです^ ^
9/29 誤記を修正しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます