第59話 次の目的地は……隣国!?

 あれからライムさんと一緒に、王国中の町や村を巡り、支援物資を届けた。


 どこの村も大いに感謝していたけど、一つ気になることがあって、スラちゃん達を何匹か村に置いてもらうことにした。


 村民達はみんな不思議そうにしていたけど、ご飯を与える必要もないし、気にしないように伝えた。


 やっぱり子供達はスラちゃん達が気になるようで、早い段階でスラちゃん達と遊ぶようになり、次第に村に馴染み始めた。


 村にさえいればいいので、彼らの家に泊まったりするみたい。


 王国全土を回って三日が経過した。




「う~ん」


「セシル? どうしたの?」


 朝の紅茶を飲みながら悩んでいると、リア姉が顔を近付けてきた。


 リア姉は相変わらず可愛い。


「スラちゃん達が空を飛べるようになったでしょう?」


「うんうん!」


「あれでライムさんの提案でいろんな村を飛び回って思ったけど――――やっぱりスラちゃんの数が足りないなって思って」


「スラちゃんの数……?」


「エデン村だけなら多いくらいだったけど、他の村にまでスラちゃんを置くとなると……狩りをするスラちゃんの数を減らしたりしなきゃいけないし……こう、心もとないっていうか」


「うふふ。じゃあ、また新しいスラちゃんを探しに行く?」


「新しいスラちゃん……そうだね。ブルー!」


 僕の声に答えるかのように、開いたテラスへの大きな扉からブルーが飛んできた。


 どうやら近くにいてくれてたみたい。


『ご主人様~やってきたぜ!』


 僕の胸に飛び込んできたブルーをなでなでしてあげる。


「ブルー。スラちゃんをもっと増やしたいんだけど、どうしたらいい?」


『僕達の数……は中々難しいぜ!』


「え! 難しいの?」


『王国中に住むスライムは全員集まっているんだぜ!』


 へぇ~そうだったんだ。


「じゃあ増やす手立てはないの?」


『あるぜ!』


「それを教えてよ!」


『隣の国に行けば、新しいスライムがたくさんいるぜ! みんなこっちに来たがってるぜ!』


「ん? みんなこっちに来たがってる?」


『だぜ! みんなご主人様の従魔になりたいと願っているぜ! でもこっちには来れないぜ!』


「なるほどな……うちのスラちゃん達は空が飛べるけど、普通のスライムは空が飛べないから?」


『違うぜ! スライムが自力で生まれた場所から離れられる距離が決まっているからだぜ』


「そっか~そういえば、ブルー達がどこから生まれたか全然わからなかったね」


 スライムって意外にいろんな町にいて、害がないから放置されているし、何かゴミがあったら食べて貰ったりして、便利で身近な魔物としても有名だ。


 でもよくよく考えたら魔物って森の魔素から生まれて、知恵や感情はないし、森から出ることは魔物の行進スタンピードのような特殊なことがない限りはない。


「リア姉。スライムって普通の魔物と違うの?」


「うん? 違うよ~。スライムは魔素から生まれた魔物ではないとされているわね。だからどこにでもいるし、倒したらその場で消えて何も残らないとされているわ」


 そういや、文献ではスライムを倒しても素材などは何も残らないから、倒すだけ無駄だと書かれていたっけ。スライムは倒されたら世界のどこかにまた生まれ、無限に存在し続けると。


 まあ、スライムって誰からも嫌われてないし、景色に溶け込んでる気がする。


「じゃあ、もしかしてうちの王国からスライムって消えている?」


「そうね。王都でもニーア街でもスライムが消えてゴミの処分に困っているみたいよ? 魔法使いが多く駆り出されて火魔法で焼却しているのかな?」


「そんな問題があったんだね……」


「元々全てのゴミを処分することはできないし、焼却は普通だから気にしなくていいのよ。エデン村だけはスライムがいっぱいいるからしないけどね~」


 新しいことを知れてよかった。


「新しいスライムはやっぱり隣の国って?」


「うん。ブルー曰く、そうみたい」


「となると、隣国――――聖領シガンに行かないといけないわね」


 隣国は三か所あるけど、聖領が一番近いと聞いている。


 うちのエデン村からだと隣国なんてすごく遠いから、隣国って言葉は殆ど聞かないもんね。


 それに聖領というのは、国というのとちょっと違って、女神を信じる信徒達が住まう領域で、誰かの物にはならないから『聖領』という言葉になっている。


 ちなみに、お母さんはその聖領の出身だ。


「聖領って出入り自由なんだよね?」


「そうね。女神教の信徒であれば出入りは自由ね。でも、貴族はちょっと大変かも。平民の行き来は自由だけど、貴族だと王国に向かう理由を申請しないといけないから。あと向こうでも貴族は歓迎されるからね」


「歓迎? どうして?」


「だって――――ほら、寄付金をたくさんしてくれるから?」


「あ……あ~」


 何だかすごく納得がいった。


 国じゃないにしろ、誰かが所属しているとそういうのは必要だよね。


「じゃあ、聖領に行くなら――――せっかくだし、お母さんも連れて行ったらどうかな?」


「それもいいわね! きっと、お母さんも喜んでくれるわよ~」


「うん! そうしよう!」


 次の目的は聖領に向かうこと。


 せっかくのお母さんも久しぶりに帰省したいだろうし、とても楽しみだ!

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