隙間に読む恋のお話

粋羽菜子

隙間1

きっと君にはわからないよ。

彼女はそう言った。

僕はそれが無性に腹立たしくて「恋」というものを理解しようと躍起になったけど、それは理解しようとして理解するのは大変難しいだろう。

今の僕から昔の僕にアドバイス。

僕が興味を持った彼女から目を離さないようにすること。

そうすればきっと分かる。

僕は今こんなにも、彼女のことが好きだから。

あの日、失恋で泣いている彼女を見つけてよかった。

「恋ってなに?泣くくらいなら恋しなければいいのに」不躾な言葉にムッとした彼女は「きっと君にはわからないよ」、そう言った後に真剣に答えてくれた。

「きっと誰にも恋が何かなんて答えられない。誰にもわからないものだよ。でも、今の私にとっての正解はあるよ。」

涙の跡を残した顔はふわりと微笑み、花開く。

「恋ってきっと、今よりもっと、綺麗になれるってことだよ。」

「私はきっと昨日の私より綺麗になってるから、これからの私が綺麗になるために無くてもいい恋なんてひとつもないの。」

「私は私を振ったあいつを利用して綺麗になったの。ただで振られたわけじゃないからね。」

「女の子は恋をして綺麗になるのよ。」

どこかで聞いたような言葉を口にした彼女は、誰よりも強かで、確かに美しかった。

きっと彼女が笑ったその瞬間から、僕は彼女から目を離せなくなっていた。

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