しがない小国の姫でしたが、恋愛相談を武器に成り上がります
藍原美音
第1話
「アンドラ王国に告ぐ。一週間以内にサンダーリン帝国に姫を差し出せよ。さもなくば一週間後、軍勢を引き連れて再び訪問する」
突然王宮内に帝国の使者が来たと思いきや、すぐにサンダーリン皇帝からの言伝を読み上げた使者。
王宮内は当然パニック状態だ。
でも予想はしていた。我がアンドラ王国は小国ながら、資源が豊富で魅力満点の国だった。
山に囲まれているため普通の兵力では攻め入るのは難しいのだが、大陸でナンバーワンの軍事力を誇るサンダーリン帝国からしたら、そんなの関係ない。
今か今かと攻め入られるのを待つだけだったが、以外にも『姫を差し出せ』と言ってくるとは。
すなわち、帝国に売られるように嫁ぎに行けば、戦争だけは回避してやる、と。
まあいきなり戦争を始められるよりは随分マシだ。
そしてこの国には王子が二人、姫は一人しかいない。
「すまない。セレスティーナ……」
「構いませんわ、お父様。この国の役に立てられるのであれば本望です」
「ありがとう。本当にお前は優しいな」
この私、セレスティーナ・アンドラ。
サンダーリン帝国に嫁ぎに行って参ります。
「よく来たな、アンドラの姫よ。賢明な判断に敬意を表す」
「お初にお目にかかります、サンダーリン皇帝陛下。お世話になります」
必要最低限の荷物を持ち、すぐに帝国へ旅立った。
アンドラからサンダーリンは最低でも馬車で五日はかかる。
一週間以内に帝国へ辿り着くには、準備期間は一日しかないということだ。
まあ、特に装飾品に興味もなかったので荷物は少ないし、家族や使用人との別れの挨拶だけだったから余裕で間に合ったけど。
応接間には皇帝陛下の横に皇后陛下が座っている。
そして反対側に、皇帝陛下の顔を20歳ほど若くした青年が立っており私を見下ろしていた。
「早速だが、君には我が息子、テリックの妃になってもらう」
「え……? 私が皇太子妃ですか?」
「そうだ。異論ないな、テリック」
「……ええ」
驚いた。まさか私が皇太子妃になるなんて。
弱小国の姫なんて、末端の妾が良いところだと思っていたから。
もっと高貴な女性は周囲にいっぱいいるはずなのに、なんで私なんかが……?
そんな私の疑問を察したのか、皇帝陛下が補足してくれた。
「テリックは些か女性不審なきらいがあってな……特に自分に言い寄る女性は苦手だと言う。だが世の後を継がせるには結婚は不可欠。それならばと、拒否できないよう条件をつけて、皇太子妃になってくれる女性を探していたのだ」
なるほど……納得した。
つまり、皇太子に惚れるな、言い寄るな、もし皇太子が不快な気持ちを抱くものならお前の国を滅ぼすぞ、ってことか。
通りで私のような弱小国の姫が皇太子妃になんておかしいと思った。
身分の高い姫や令嬢ならば、そんなのプライドが許さないだろう。
私くらいの身分が都合よかったってわけね。アンドラ国を質に取られたようなものだし。
「アンドラ国の姫は聡明な女性だという噂を聞いていた。名ばかりの皇太子妃となってしまうが、受けてくれるか?」
「ええ、勿論ですわ」
まあ、それはそれで都合がいい。
好きでもない人と無理に一緒にいるのは苦痛だもの。
私はおとなしく言われたことだけやって、後は自由に過ごさせてもらおう。
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