最強配下達との異世界蹂躙録
雪結晶
第1章
第1部 転移、そして目標。
第1話 転移と夢…?
【エピック・ワールド】
─今までにない自由なゲームをテーマに自分だけの箱庭世界と設定でロールプレイングを楽しめるVRMMORPG。
それがエピック・ワールドである。
これは21xx年当時、莫大な人気を博し一時期は深刻な品薄で数ヶ月待ちなんてこともあった。
このゲームは基本的に1つの大きな大陸がプレイヤー毎に与えられ、そこを自由にできるというものであった。
そこでは自分の好きな設定でロールプレイングを行うことができ、地形や建物は勿論、キャラクターや各勢力を自由に設定できそれらに沿ってゲームを楽しむ事ができる。
その上、他プレイヤーの大陸へも行けるようになっており物資の強奪や貿易なども自由である。
そんなわけでエピック・ワールドでは沢山の大陸で数多の勢力圏が出来上がっていた。
一応このゲームも自身や敵、仲間のレベルには上限がある。
さらに全てのNPCの類は勿論仲間にできるのだがレアな部類は例え【設定】に入っていたとしてもその大陸にリスポーンするとは限らない。
他の手段として、このゲームではキャラクリエイトができるのだが欲しい種族を創る為にはアイテムが必要だったりする。
なのでレアな種族やモンスターを創ろうとするとかなりのコストが掛かってしまうのだ。
とは言えキャラクリエイトは自由度が高く、外観だけはそれらに似せることはできるのだが…
ちなみに先のレアなものたちはサーバー内にごく少数しかおらず中にはキャラクリエイトでは生み出せない者もいる。
一方でたった一体だけキャラクリエイト限定のキャラもいる。
ぶっちゃけ全て揃えるのは無理に等しい。
しかし、俺はこれら全てを揃えているのだ。
え?なんでかって?
それは──
俺こと[
最初はここまでやり込む筈では無かったのだが
自分の大陸内で自らの国を築き上げ様々なものを創っていく内に
アレも欲しいコレも欲しいとの具合で色々と集めていった結果がこれだ。
課金額は当に4ケタ万を超えている。
お陰様で色々と犠牲にすることになってしまったが…
とは言え本来できないようなこともここまでくると運営も優待してくれて、できてしまうのだ。
これらによって俺はトップに上り詰めた。
同時に多くのプレイヤーから反感を買ったのだが。
俺を倒す為にサーバー中の名だたるプレイヤーを筆頭に討伐軍が組まれた。
ここまでプレイヤー同士が団結したのも初めてでそりゃもう、お祭り騒ぎ。
実に10万ものプレイヤーが俺の大陸に攻めてきた。
対する俺は配下のNPCが5万体…
その上相手のプレイヤー1人1人に配下や仲間はいるのでその数は知り得ない。
しかしギリギリとは言え結果は俺の勝ちだった。
それ以降はここまでの規模の討伐隊が組まれることはなかった。
ともあれ1つゲーム、それもリアルタイムで10万もの人が同時に協力する。これは多分世界でも類を見ない事だろう。
それぐらい、皆んなが熱中してこのゲームをやっていたのだ。
それから7年経った、俺もアラフォーになってしまった。
あのゲームも歳をとったと言えばいいのか…
端的に言えばエピック・ワールドは衰退した。
最早、あの時の輝きはなくサービス終了というカウントダウンが始まっていた。
結局、課金額はもうひと頑張りで億に届く程に使い込んだ。
俺にとっての全てがこのゲームに捧げられていた。
親から引き継いだ会社を売却し、持ってた株も売り払い、大勢の人に迷惑をかけたのだから。
それがあと少しで無になる、明日0:00をもって。
──やってきたことに後悔はない。
時刻は23:50、目の前には大きな椅子─玉座が置いてある。
それは禍々しく神々しい相容れない2つの要素が織りなす美─。
ここは玉座の間。
この俺の居城である【ヴァルハラ城】は神話の宮殿からその名を取った。
そこは確かに神々しく神聖な空気を放っている。
…反面、何か不気味な雰囲気も醸し出すその外観と内装は俺の趣味だ。
故にかなり時間をかけた場所である。
俺の最期はここにしたい、そう思える場所だ。
そう、最期なのだ。
思い残しは無いようにしたい。
…1番俺が手塩をかけて育てた彼女をもう一度目に焼き付けておこう。
コールのコマンドを打ち彼女が来るのを待つ。
俺がこのゲームで課金した殆どは彼女の強化の為だった。
最初にクリエイトした思い出のキャラで、設定では俺の妹である存在。
このゲーム内にも一体しかいないレアな存在でもあった彼女…
そんな思いに更けていると玉座の間の重苦しい扉が開かれ彼女が現れた。
そして彼女は俺の前にちょこんと立つ。
あと5分で終了する。
そうだと分かっているのだが───。
あぁ…何度も見てきた彼女─[セレスティア]に我ながら見惚れていた。
可愛らしい小柄な体型に膝まで伸びた絹のような繊細な金髪。
愛くるしい、くりくりとした二重と長いまつ毛が特徴な紅の目。
下手をしたらこの城よりも時間をかけて創ったその少女は、
俺の最も大切なキャラクターであると言える。
せめてこの子だけでもなんとかならないのか。と思っていると、
もう終わりまで1分を切っていた。
楽しかったな…明日からできないんだな…
そう思うと…ふと想いが溢れ出してしまった。
「終わりたくねぇよぉぉぉ!!」
─それは、叶わない願い。
「あぁ…セレスティア、今までありがとう」
あと10秒程で終わる理想郷。
「本当に、ありがとうな」
そういってセレスティアに抱きつく。
勿論、感触はないし温もりなんてものは存在しない。
彼女も、周りの配下も皆んな無表情だ。
『まもなく強制ログアウトされます』
そんな無機質な声と文字が目の前に現れて
──俺の
真っ暗な世界となったエピック・ワールドから現実へと帰る為、自分の頭に触れる。
「あれ?ゴーグルが…ない?」
…おかしい、状況がわからない。
「っ!」
直後、謎の激痛と共に俺の意識も暗転した。
「お兄ちゃん!大丈夫!?」
聞き覚えのない声だ。
ふと目を開けると信じられない光景があった。
「ティア…?」
「うん!セレスティアだよ〜!」
──夢か。
周りを見渡せば玉座の間に居るようだった。
…これが夢ならば楽しんでおくべきだろう。
「ティア、少し手を貸してくれ」
「もちろんだよ♪」
小さくて温かい手だった。
なんとリアルなんだろうか。
目線を上げれば、配下達が跪いている。
彼らは城での雑務と警護を任されている守護部隊【ガーディアン・フォース】の面々だ。
「面をあげよ。」
「「はっ!」」
見事に揃った声が響く、ゲーム内ではNPCの声まではなかったので
少しむず痒い。
─さて、なにをしようか。
夢ならば覚めるもの、そこまでに何をするかは非常に迷う。
すると、配下の1人が話しかけてくる。
「僭越ながら伺いたいのですがアムラ様、此方はどこでありましょうか。」
静かな部屋に優しい紳士のような声が響く。
─彼の名はセヴラス、ガーディアン・フォースのリーダーであり、整えられた髪と髭を持ち黒のタキシードを着ているまさに紳士。
とて、人間のような姿をしているが正体は
そしてアムラとは俺のエピック・ワールドでの名である。
というか、それよりも…
「どう言うことだ?ここはお前の家であるヴァルハラ城だぞ。」
「はい、勿論此方がヴァルハラ城であることは存じ上げておりますが、気配から察するに外が以前とは違う場所だと思われます。」
「なに?なるほどな、ならば外に赴いてみるか」
ふむ。夢にしては随分突飛な設定なものだな。
兎に角、玉座から立ち上がり外へと向かおうとする。
「私もついてっていいかな??」
「もちろんだ。」
そうしてセレスティア─ティアと共に歩みを進めた。
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