第100話 エピローグ

あのクリスマスから,10年が経過した.

「懐かしいわね.高校,ちゅんくん.」

鈴華と僕は,高校にやって来ていた.


「その呼び方,辞めてくれませんか?鈴華」


「いいじゃない,可愛くて」


あいも変わらず,無表情だが,10年もいると普通に小さな変化で感情を読み取れるようになっていた.……多分.

「良くないですよ.それにしても,一番乗りですか.同窓会」


「君が急ぎすぎなのよ.」


「いや,だってさ.」

最後に着くのは何か嫌だし.


「まだ,茉奈は家みたいよ.時間があるし,一回公園にでも行くわよ.」

鈴華は,携帯で連絡を取っていたのか.そう言って,僕の右手を掴んだ.


「良いですけど.そしたら,遅刻になりませんかね,同窓会.」


「大丈夫よ.前の同窓会も大丈夫だったじゃない.遅刻ぐらい問題ないのよ.行くわよ.」

鈴華は,必要に僕の手を引っ張った.地味に痛い.


「じゃあ,行きますか.公園.」


公園に向かって歩きながら,

「そう言えば,雀君,聞きましたか?風香と真紀の話.」

鈴華は,そう言って話を始めた.


「ああ,海外に移住するって話ですか?お金あるのかな.」

10年でいろいろあった.まあ,いろいろあったのは,主に,僕と鈴華では,無くて周りなのだが.


「私はさ,心配で止めたのよ.貯金してから行きなさいって.でも,聞く耳持たないの.止めるの手伝って.」

そのうちの大きな一つは,妹のような幼馴染が,ガチの義理の妹になることだろう.いやこの場合は,どっちなのだろうか?良く分からないけど.


「でも,偉そうに口出しする権利が.僕らにそんな権利があるのかな?」

まあ,大学生時代に結婚を強行しようとした鈴華を止めるとかいう騒動があったし結局,卒業してからになったけど.まあ,書類を出すだけだったけど.


「それは,それ.これはこれよ.それに結局,私待ったじゃない.」

鈴華は,無表情でそう言ってこっちを睨みつけた.


この表情も見慣れたものになっていた.

「……10年か.」


「急にどうしたの?雀君.感傷に浸ってるのかしら?」


「いや,なんか凄い時間が過ぎたなって,いろいろ変わったなって.」


「幼馴染の名字が山田になったり,愛甲さんが謝罪の手紙ですか?」


幼馴染と親友が結婚した.結婚式で代表の挨拶を2回読まされた.新手の嫌がらせだったと思う.まあ,結婚式も良いものだなって思えたのは良いことだ.僕たちは,式を挙げなかったが,してみたいと思った.お金をためて鈴華にサプライズをすれば流石に驚くだろう.

後は,謝罪の手紙が届いた.……僕がこれを言うのは傲慢だが,幸せになってほしいと思う.


他にもいろいろあった.

「他にも,六角関係の人々がいい感じに解消されて,面倒ごとに巻き込まれなくなったり,成志君が義理の兄になりそうだったり」


六角関係の人たちのトラブルは大体,落ち着いた.高校時代は,いろいろ巻き込まれた.新聞部とか生徒会選挙とか,修学旅行でトラブルに巻き込まれるとは思わなかったし.大学も同じだったし.本当に大変だった.巻き込まずに勝手にしてほしいって当時は思っていたが,いい思い出だったのかもしれない.


それと,成志君が,なんか鈴華のお姉さんと付き合っているらしい.何がどうなったらこうなるのか,僕には分からない.

「……私はまだ反対しているわ.何で,奏姉さんと付き合ってるのよ.あの人」

鈴華は大反対していた.ちなみに僕は,小反対している.


「まあ,でも変わらない事もありますね.」

僕は,じっと鈴華のほうを見た.


鈴華は,何を言いたいのか察したのか,わざとらしく笑い

「……何を見てるのかしら?ああ,私への愛かしら.」

そう言っていた.相変わらず笑うと可愛かった.まあ笑ってなくても…….


「それは,増えてるので変わってませんか?」

まあ,これぐらいでテンパることなどない.実際,増えてるしね.


「……言うようになったわね.雀君.」


「とりあえず,牛乳飲んでも遅かったですね.」

冗談がいつまでも終わりそうになかったので,核心をついてみた.

鈴華の見た目は,全く変化していなかった.145センチの童顔,無表情美少女である.


「何よ.……伸びたわよ,2ミリ.」


「……誤差」

2ミリを堂々と言う鈴華は可愛かった.別に身長とかスタイルとか,いや,スタイルは,まあ,スタイルは大事だ.こんどから一緒に運動をしよう.


「誤差?2ミリは大きいわ,謝りなさい.」


「ごめんなさい.」


「分かれば良いのよ.それとまだこれからよ.私は,これから,成長期なのよ.」

本当に小学生のような発言になっている.


「そうですね.君が告白されてる現場に遭遇して,結果結婚するとか.予想外だよ,本当に.」

いろいろあったが,まあラッキーだった.宝くじを当てるよりも困難だろう.ラッキーだった.


「そうかしら,私は予定通りよ.」

鈴華は,ニヤリと笑った.いや,ちょっと,怪しいのか.だったらどこから?えっ?いやでも,カッコ良い鈴華は,絶対演技じゃないし.


「えっ……」

混乱した.


「嘘よ.人生計画は,結構変更しながら進んでるわ.それと,結婚式,式の方のサプライズの準備ありがとう.」


「えっ?」

何故バレてる?


その時,ちょうど,公園にたどり着いていた.まあ,たまには,先手を取ろう.

「まだまだね.ふふふ,やっぱり」

鈴華は,ご機嫌の言葉を続けようとしたが,彼女の口を物理的に封じた.


それから,

「そりゃ.良かったです.」

そう言って笑った.


「……雀君,朝の公園は風情が足りないわ.50点ね.」

鈴華は,そう言って笑っていた.仰る通りだった.


「まあ,死ぬまでには,頑張って100点を貰えるようにしますよ.」

まだまだ,先は長いらしい.






ーーーーーーーー

終わり


番外編を書くかも知れないです.分かりません.

何も考え無いので何かリクエストがあればどうぞお願いします.

他にも書いているので,お暇なら読んでみて下さい.

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る