決戦?

第19話 最悪1

地獄は何処にあるか?その答えは出た。

ここだ。朝の学校の自分の教室だ。地獄がそこにあった。

「「最悪」」

隣の春野さんと声が重なった。同じことを思っているらしい。

まあ、そうだよな。教室に入ろうと思って教室中を見て、無言で引き返したのだから。


教室の春野さんの席の前に鬼の形相で立っていたのだ。

ああ、もう、面倒なのが確定だ。


「どう思いますか?鈴華さん」


「そうね。これは、君の二股の噂を聞いたのね。」

春野さんは、小さく笑った。それから、ぺっこりと頭を下げた。それは、もう良い。どうせ、自分で巻き込まれるのを選んだのだ。でも、それはそれだけど。


「……怠いな。てか朝から来るなよ。」

何で朝一番なのかな?


「そうね。どうしますか?帰りますか?」

春野さんは、冗談っぽく笑った。


「それは流石にヤンキー過ぎますよ。」


「それなら、こうしましょう。片方が時間を稼いで原因を呼んできて説得させる。良いわね、雀くん。」


「なるほど、まあそれで納得するかは、知らないですけど。」


まあ、成志さんが会話が通じるタイプとは思えない。仕事が速い友人二人のおかげで、成志さんという人物の人となりが掴めた。簡単に言えば、正義中毒者。自分の価値や自分が信じたものを間違っていると疑うことをしないタイプ。悪意を持って何かをすることはないが、無意識に悪意を振りまいても何も気が付かないタイプ。非常に面倒で厄介だ。そしてかなり自信家でナルシストらしい。面倒だ。


「まあ、でもマシにはなるわよ。」

確かに、それはそうだ。


「どっちが行きますか?雀君」


「君が呼んできてください。僕、顔を覚えてるか微妙ですよ。」

逆恨みさんの顔はうろ覚えだ。


「ええ、嫌よ。私、金輪際関わるなって言ったのよ」


「まあ、君から行くならセーフでは、それに。これは、責任を取ってもらうだけなので」

まあ、これは、セーフでしょ。


「確かに、行ってくるわ。お互いの健闘を祈ろうか。彼ピッピ。」

彼女は冗談ぽく笑っていた。


「早く助けに戻ってくださいよ。彼女さん」

そう笑い返した。まあ、遅かれ早かれだったし、それに、これを解決することは、手紙の解決に繋がるかもしれないしな。


深く息を吸い、僕は教室に入った。

まあ、僕の特に害のないキャラは引退かな。

まず、春野さんと休み時間過ごし始めたあたりから、立ち位置は変わり始めてたし、まあいいか。


「ご機嫌よ」

そう大きな声で言いながら教室に入った。


「……天野 雀。」

僕の声に気が付いた成志さんは、そう速攻で叫んだ。修羅場か。これが。


「朝から元気ですね。」

とりあえず、適当に作り笑いを浮かべてそう言っておいた。今からすべきことは時間稼ぎと僕のストレス解消だ。つまり、普段取り繕って空気を読むところをガン無視すれば良い。

それに、正直、もうクラスメイトにどう見られるとかの評判とかどうでも良い。春野さんが、ラーメン食べたぐらいで恩返しの釣り合いが取れていないとまだ思っているなら、友達になって貰うように頼もう。まあ、教室に一人友達が出来るのだ。それで、クラスメイトにどう思われようともチャラだろう。


「この二股やろうが」

案の定、成志さんは噂を聞いていたのだろう。そう大きな声で叫んだ。教室がざわざわし始めた。


「はぁ、やっぱりか。その証拠はどこにあるんですか?」

とりあえず会話を試みて……

右頬に強烈な痛みが走り、気が付けば、地面に突き飛ばされていた。


「……そう言って言い訳をするのが、最大の証拠なんだよぉ。」

声を荒げる成志さんの声で、状況を理解した。


殴られた。痛みで軽く涙目になりつつも立ち上がった。

痛い。何?こいつ?猿かよ。人間なら殴る前に言葉を使えよ。殴る前にちゃんと噂を調べろよ。

「頭可笑しいんですね。いきなり、殴るって」


「黙れクズが。」

成志さんがそう叫んだが、僕は、聞きたいのだよ。噂の僕と現実にぶん殴っている君、どちらの方がヤバいのか。


怒りを通り越して呆れてきた。なんか可哀そうに思えてきた。

いや、もちろん、こいつに処分が下ることを望むけど。

逆に良かったかも知れない。相手がこんな感じだったから、冷静になれた。

「いや、いきなり殴るやつが良く言えますね。まあ、話し合いをしましょう。」

とりあえず、そう言って笑った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る