第11話 禁断の部屋
階段は、本当に薄暗くて狭かった。人2人がギリギリ通れるくらいの足元が見えない道をしばらく行く。
そして、その先には黒くて幾何学模様で彩られた扉。アルルが、後ろを警戒したのか一度視線を向けた後扉を開ける。
暗闇に包まれた階段の下、入り口扉が低く、ぎしっと音を立てて開く。その向こうに広がるのは、怪しげな雰囲気に包まれた部屋。薄暗い光が部屋内に漂い、床一面には奇妙な紋章が刻まれていた。
壁面には、古代文字なのか見たこともない文字が文章のように羅列されていた。それから、フードを被った人間、確か黒魔術師の服装だっけ、それから白い羽を付けた大人の女の人の姿。
あれは、天使の人の絵──なのかな?
壁際の本棚には魔術書が棚に並び、封じられた宝石や秘密の薬品が不気味な輝きを放っている。中央には、黒いローブに身を包んだアルルが座り、冷たい眼差しで集中していた。
そして、前方に移動したアルルがこっちを向いた。
「ここは、黒魔術の域に達した一般人が踏み込んではいけない禁忌の場所。人に見せるわけにはいかないから、隠し部屋を作って用意したの」
「で、時々アルルに占星術とかいろんな禁断系の魔術の指導を受けてるってこと」
「人に知られたくないことをするには、うってつけの部屋でしょ」
「今日は占星術の研究。魔力が満タンだから、全力で新術式を打ってもらうってこと」
「そゆこと」
まあ知ってるけど、理由はわかる。黒魔術と占星術も本来は別物みたいなものだけど、世間から省かれた力同士協力した方がいいところはしてるといった感じだ。何も知らなかったふりをして言葉を返す。
「そうなんですね、初めて知りました。とても新鮮です」
アルルの手元には、黒い煙が渦巻く魔術陣が描かれた表がある石の箱があった。その中には、人知れぬ秘術によって授けられた力を秘めた宝石があるはず。アルルの指先がそっと宝石に触れると、部屋は一層怪しげな雰囲気に包まれる。
「じゃあ、いきなりだけど行くわよ」
「へい!」
自信満々にミシェウが腰に手を当て杖を手に取った。
アルルの唇からは、古代の言葉が囁かれる。言葉は響き渡り、魔術陣が奇妙なエネルギーに包まれていく。部屋中には黒い霧が広がり、アルルの姿が不気味に浮かび上がる。
氷のようなどこか不気味な雰囲気の静寂が室内を支配し、ピリピリと空気が凍りつくような緊張感が漂っていた。魔術陣が光り輝くと、魔術師の目が一瞬にして眩しく燃え上がる。
「研磨されし覇王なる力── 今ここに建言せよ。トワイライト・ライトホール」
その瞬間、床の紋章が一斉に輝きだし、忌まわしい魔力の波が部屋いっぱいに満ちる。闇のヴェールが一瞬にして瞬きを奪われ、この場所が違法な魔術のエッセンスで満たされる。
アルルは、怪しく微笑みながら手を振りかざす。その一撃で、部屋中の魔術書が舞い上がり、宝石が輝きを増していく。周囲の空気がゆがみ、魔術陣が振動し、床から奇妙な音が立ち上がった。
「さあ、行ってみなさい。あなたがどれだけ普段から鍛え上げているのか私が見てあげるわ」
「ありがとう──」
ミシェウの杖が光り始めた。強く握っていて、占星術のために強く力を込めているのがわかる。星力だっけ。
あっという間にミシェウの額から汗が浮かんでいる。よほど消耗しているのだろう。それでも2.3度大きく深呼吸をすると、床にある紋章が青白く光り始め、見たことのない文字が浮かび始めた。
ミシェウの髪がふわりと浮かんで、彼女を包む光がひときわ強くなったのを感じる。そして、杖を大きく天に向かってあげると叫び始めた。
「いけ! カシオペア・シューティングスター・エアレイド」
天井に、まばゆいばかりの星々の絵が浮かび上がる。
さらに、ミシェウの持っていた杖から発せられている光。それが白から青、緑、赤へと数秒間の間にカラフルに色を変えていく。とってもきれい。
「大丈夫、衝撃は壁が吸収する。音が漏れる心配もない、全力を出しなさい」
「わかってるって!」
いよいよミシェウの術式が来る。ミシェウは大きく息を吸って、大きく杖を上げた。」
「聖なる星の力、今ここに顕現せよ──」
ドォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!
今まで聞いたことがないくらい大きな爆発音、思わず耳をふさぐ。慌てて防壁を召還。もう、一発殴るならそう言いなさいよ……。
障壁に、ピキピキとひびが入ってガードしきるのに結構ギリギリだった。
やがて、爆発が終わり目の前の景色が晴れていく。その姿に衝撃を受けた。
爆発によって、アルルの背後にある本棚や小物類以外はすごいことになっていた。私と同じように障壁のようなものを張っていたのね。
床が、あまりの衝撃にところどころめくれあがっている。よほどすごい衝撃だったんだ。
パチパチパチパチ──。
「素晴らしいわ、いい術式だったわね」
ほんのりと微笑を浮かべ、称賛の言葉を贈るアルル。ミシェウは──にこっと笑ってお礼を言うが──。
フラフラフラフラ~~くるっ!
ミシェウは、さっきより顔が青白くなり、ふらつき始めた。右に左に体をよろよろとさせる。慌ててミシェウの方へ寄っていきミシェウの腰のあたりを抱きかかえて体を抑える。
「ありがと」
「大丈夫?」
力が入らないのだろう、私に完全に体重を預けてきた。さすがに、全部預けてくると重く感じる。
ふらついて、なんとか体を支える。慌てて私から離れて一人で立ち上がろうとしたが、また体がよろけてしまう。
すぐに近づいて、倒れこむミシェウの体に抱き着いた。
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