4 妊娠
ソレスの王家では、
だから乳母は女王に先んじて身ごもる必要がある。
「だからといって、勇み足過ぎやしませんか」
部下でもあり腹心の友でもあるカスタネアは少々、あきれているようだった。
「そのつもりはなかった」
あれっきりであれば、身籠りはしなかった。
あの城壁の仮寝の小屋で、若者が「見張りの交代に行く」と、いなくなったあと、夜明けの光がさしこんですぐ、オリダは帰り道を見出して城内に戻った。
あれっきりであれば。
ただ一点、身ごもるには、女王の許可と男の種の選別がなされる。血が濃くなることを避けるための、ソレスの知恵として。
「相手は誰か、とは聞きませぬが」
部下は呆れている。オリダにはわかる。
「オリダさまが直に身籠られるとは」
あぁ。わかっている。夢中になったのは、自身だと。
「王族の
「呆れているのか。カスタネア」
オリダは
「いえ。しかし、わざわざな原始的な方法で、
「それは、そうだ」
余計な詮索と混乱は招きたくない。
「その男は、野心家ではありますまいな」
部下の声に心配が混じる。
「男は私の立場は知らぬ。
「それは、お見事。ですが、女王には打ち明けなくてはなりますまい」
許可なく身ごもったことを、女王リウィアが、どのように受け止めるか。
「オリダの選択だ。受け入れよう」
女王は落ち着いていた。
「ただし」
やはり、ただしと来た。
「女王の許可なくという部分は見過ごすわけにいかぬ」
この場にはオリダとカスタネアが呼ばれていた。
「オリダは降格とする。代わってカスタネアを次期
腹心の友との座が入れ代わった。異議はない。
「
本日、二度目の、ただしだ。
「
「もちろんでございます」
オリダは目を伏せたまま答えた。
現世の男により身ごもる場合は、男女の産まれる確率は五分五分となる。
ソレスの女は、皆が
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