第2話 だから彼女はひた隠す
前書き
どうでもいいが、作者が藍井エイルの曲で特に好きなのは『サンビカ』です。
前書き終わり
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『次のニュースです。国防軍は先日失われた戦車20両を補填するため、TR社の最新型戦車を導入するための予算要求を国会に提出しました。これを直ちに内閣は承認したことで、国内の防衛力の低下は一時的に収まる見込みとなり、日経平均は2%の好転をみせ…』
夜のニュース番組は、一人暮らしのアパートに少しだけ彩を添えてくれる。
「…はぁ、また税金が上がるの?」
もっとも、そんなニュースを見るわたしの心は沈んでいたが。
異生物と呼ばれる存在がこの世にあらわれて4年が過ぎた。
共通して紫色の濁った瞳を持ち、突如現れては触れた人間を片っ端から消滅させていく。その特性により、社会のあらゆる場所が安全地帯ではなくなり、最初の半年はパニックが続いた。
だが人類は異生物に滅ぼされる……ような事態にはならなかった。サイズ的には2から5メートルが主流だった異生物は、今の人類の武器でもなんとか倒せる程度の存在だったためだ。
やがて世界各国は、防衛の名のもとに軍拡政策にシフトしていく。今では
だが、2週間前にその余裕もなくなる事態が起こった。
『先日現れた第一号異生物の被害により倒壊したままだった製薬工場を、本日正式に廃止することが発表されましたが、若林教授はどう評価していますか?』
『かなり被害は大きいかと』
『えぇ…』
『あの工場で作っていた医薬品は、都内の病院にも卸していたんですよね。なので今病院では薬品不足、一部では争奪戦のようになっているとか』
『政府の帰宅困難者支援委員会は、各地で増産を指示していますが……』
《超大型異生物》
そう呼ばれる50メートル級個体が出現したのだ。
それまで仮説レベルだった(*1)バリアを張り、あらゆる建造物を破壊していくその姿は、人類に絶望を与えた。
たった一体の出現で、街を廃墟にするその姿は、全盛期の怪獣映画を彷彿とさせた。
『……こんな言い方すると被災した方々に怒られますが、やはりアレ(*2)が退治してくれなかったら、もっと被害が出ていたでしょう』
『そのロボットがなんなのかよくわかっていないのも不思議なんですよね。国防軍は関与を濁していますし』
『とりあえずは、異生物を敵と認識しているのは間違いないが』
そしてテレビには、燃える町を背景にたたずむ、ロボットにしか見えない何かの背中が移る。世間では救世主の降臨だと評価される映像だ。
「……あぁ~~もおぉぉ~~」
そんな映像を見てわたしは悶える。
なぜならその映像に映るロボットのような何かこそ、わたしが変身している《ミニステール》に他ならないからだ。
どうしてこうなったのよ……
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わたしの名前は《
現在16歳の高校1年生だ。母を早くになくし、父とその姉の3人家族…だったのだが、4月に決まった父の異動についていくことなく、一人暮らし中。これといった特徴もない平凡な女の子…のハズだった。
そんなわたしがなぜミニステールに変身してしまうのか。
話は2週間前に遡る。
その日、月に一回のフリーマーケット(*3)で布を買いに××市まで行っていた。その帰り、一緒にいた友人とともにバスに乗っていた時に超大型異生物第一号が出現。
町が燃え、人々は逃げまどい、異生物は熱線を吐いて暴れまわった。
避難の車で渋滞が発生してしまい、仕方なく走って逃げていたところを、車の爆発に巻き込まれ私は大怪我をしてしまった。
血まみれのわたしを泣きながら介抱してくれた友人の真後ろで、異生物が口を開け大気を揺らがせる赤い光を発し始めるのを見た。途切れそうになる意識の中でわたしは終わりを悟り、友人に笑顔を見せようとしたその時。
わたしは光につつまれた___
オマエニ チカラヲ アタエル タオセ ヤツラヲ
ソウシナ ケレバ オマエタチ モ ワタシトトモニ ホロブゾ
ワレガ アタエル ソノ チカラノ ナハ
ミニステール
そして気づいた時には機械の体を手に入れて、超大型異生物を倒していた。
…なんで一般人なのにそこまで動けていたかって?わたしが知りたいよ。なんか機械の体になったと同時に使い方がわかっちゃったんだもん。
兎も角、私は異生物を倒した後、すぐに元の人間の姿に戻っていて、友人に聞いてみたら
「急に光ったと思ったら、なんかでかいのが出てきて、あの化け物を倒していた。」
と言っていた。
そしてわたしの左手に持っていた謎のステッキを見て、それで変身したのでは?と言いながら避難を再開したのが、覚えていることだ。
そして避難テントの辺りについて、ふと
「みずき、ひょっとしてさっきのやつ、服着ていない…とかじゃないよね?」
それを聞いたわたしは衝撃を受けた。たしかにぱっと見ロボットっぽい装甲に包まれていたから、気にしていなかった。だけど、異生物の攻撃は服越しに当たっているのではなく、地肌を触っているような感覚に近かったのだ。
もちろん、そんな感覚というだけでわたしの気のせいかもしれない。しかし、あれが装甲部分でしたという保証はどこにもない。
つまり……
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「やめてぇ~、わたしの姿を全国放送で映さないで~!!」
あれから2週間。わたしは友人以外に自分がミニステールだということを言い出せずにいた。
だって…、実はあれは皮膚なんですと言ったら、恥ずかしすぎて死ぬ自信がある!
それなのにヒーローだ、救世主だ、俺たちの夢だとミニステールを称賛する声が各地から上がり、大騒動を巻き起こしている。
『やはりスラスターをふかした姿が姿がいいですねぇ』
『これがスーパーロボットかリアルロボットという議論が各地で沸き起こってますし』
「そんなことはどうでもいいんだよ!重要なのはわたしがミニステールになったとき服着ていない疑惑なの!!」
アパートの一室で私は身を悶えながらコメンテーター共にツッこんだ。
今回を含めて3回の変身……いまだにミニステール時の肌感覚問題は解決していない。
というか、なんでロボになっても痛覚あるの?痛いのが嫌で一瞬異生物から距離を取るようになったし。不便なことしかないんだが!!
しかも変身前と変身解除したときに服着てるから余計訳が分からないのよ!!
ちらりと脇を見ると、例のステッキが鎮座していた。
全長は27センチほど。紅白の棒に、歯車の意匠をこらした握りがついた金属質のステッキ。これに触れて念じると、ミニステールの姿になる。
だがこのステッキ、実は重い。なぜか50キロ近く(*4)あるのだ。一度友人に持たせてみたら、重すぎて怪我しそうになったほどだ。
そんなものを私は平然と持ててしまう。明らかにあの事件の後から身体能力が上がっている。だが私の皮膚や骨格は健康な人間のもので間違いないという。つまり何か別の要因があるわけで……
「おのれあのときの声め~~!!絶対許さないんだから!!」
小岩井みずき16歳。
なぜかロボットになる生活を強いられています。
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(*1)今までの個体も僅かながらに張っていた可能性もあった。
(*2)正式仮称はまだ錯綜としている。
(*3)リサイクル推奨の国の政策の下、各地で催されるようになった。
(*4)体重計ではわからず、天秤秤を使用した。
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後書き
気が向いたんで続きました。
次回はいつ投稿できるか未定。
え、友人ちゃんの正体?
次回以降出てくる予定。
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