第16話

 ダンジョンから帰る途中でルインはレイチェたちにこれからの計画を話す。


 

 


・・・というわけだ」


「なるほどな」


 レイチェたちのことを説明したついでにルインはこれからの計画をレエンたちに説明した。


 計画の目的も達成率も問題はないのだが、源初たちの中に一人でも異議を唱える者がいればこの計画は破棄されることになる。


 

 源初内での議決方法は全会一致制であり、一人でも反対意見を持っていたらその提案は却下される。


 なぜなら源初たちにとって一番大切なのは互いの関係であって、ささいなことでその関係を壊したくないからだ。


 とはいえみんなそう思っているから、今まで反対意見が出たことはなくむしろ改善点を出し合うほうが多い。

 




 ルインの話を聞き終えた源初たちは頷く。


「その計画でいくなら分別行動したほうがいいかしら」


「ああ。この街、トレイドに残る人と王城に向かう人、そしてほかの公爵領に向かう人を決める必要がある」


「公爵は三人いるから一人ずつ分けると三人余るね~」


「王城は念のため二人で向かうほうがいい。そのまま北上して国境に駐在している第一騎士団を解決するのはどうだ?」


「そうね。トヴァの言う通り王城は一番大事なところだからそれでいいと思うわ」


「残った二人は東と西の国境に駐在している第二騎士団と第七騎士団を解決して、残った南の国境に駐在している第四騎士団と第六騎士団はトレイドを解決した人が向かえばいいじゃないかな」


 レガリアの南の国境は魔王国と接しており、そこから定期的に魔物が押し寄せるためにほかの国境と違ってより多くの騎士団が駐在している。


 現在トレイドに駐在している第三騎士団も本来は南の国境を守る一つだったのだが、トレイドのスタンピートを解決するために地理的に近い第三騎士団に解決するように命令が下された。


「はいはい! クレアがトレイドに残りまーす!」


「いいのかしら、結構大変だよ?」


「へーきへーき! だいじょうぶ!」


「じゃあ俺様は王城に行こうかな。俺様に、ふさわしい舞台だ」


「やらかしたら殴るわよ」


「・・・まじめにやります」


 前髪をかきあげ、どや顔を決め込むレエンに対してゼーレンは当然のように警告する。


「余は西に向かう。ついでにドワーフのやつらの動きを抑えてくる」


「わたしは東かしら。エルフたちに会うのが楽しみだわ」


「わたしは、北。王城に行く」


「シュティ、よろしくな」


「うん」


「残った僕とルイン、フィーちゃんは公爵たちだね~」


「それでよい」


「…わかった」


 無事に源初たちの役割を決め終わり、次はレイチェたちの番だ。


 源初たちが話している最中ずっとそばで聞いていたレイチェたちはやっとのこと自分たちの出番がもらえた。


「レイチェ、ミイシェ」


「「はい」」


「貴様らは昨日の夜と同じように騒ぎを生み出しこの国にわれらの存在を知らしめせ。だがヴァンパイアであることは隠せ」


「「はい、かしこまりました」」


「ではこれより、計画を実行する」


 ルインの声とともに皆それぞれ分かれて準備を始める。


 目的はただ一つ。


 この国、レガリアを『簒奪』する。








 準備やタイミングなどのため一週間後に一斉に行動を開始することとなった。


 一週間の間、源初たちはそれぞれトレイドから旅だち、無事に目的地に到着することができた。


 もちろんこの間レイチェたちは眷属を召喚し続け、トレイドからその周辺都市、今となってはレガリア全土に騒ぎを広めている。


 

 騒ぎを起こす目的は民衆のまとまりを瓦解させるためであり、自分のことが危うくなれば他人のことを考えることはない。


 帝国側も何とか解決しようとしているが現状犯行を行っているのがヴァギアノンという組織であること以外何一つわかっていない。


 この一週間の間で被害者の数は増加し続けており、全土でヴァギアノンの情報を探っているが未だに結果が出ていない。


 そのせいもあって民衆の帝国に対する信頼が時間に連れますます低くなりつつあり、大規模なものではないが場所によっては民衆が領主の館の前に集まるといったような事件も起こっている。


 少しずつレガリアの民衆たちの間に不安の感情が生じはじめ、その心が恐怖に支配されようとしている。


 混乱の渦がレガリア全体を巻き込み始める。


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