源初の八人は世界を「おもしろく」したい
@Foxspirits
第1話
空間が揺れる。
二つの力がぶつかるたびに空間が悲鳴を上げる。
戦っているのは『破滅』を司る少年、ネアス・ルインと『輪廻』を操る青年のカーディス・レエンカルナシオンである。
「どっちが勝つのかしら」
「ル...インが...きっと...かつ」
「そう? じゃあ私はレエンに賭けようかしら」
同じく『輪廻』を操る女性、レフミス・ゼーレンヴァンデルングと『破滅』を司る少女、いや、幼女のルリィ・フィーネは静かに戦いの行く末を見守っている。
ゼーレンとフィーに見守られる中、戦いは終盤を迎える。
数えきれないほどの差し合いのなか、一瞬の隙を突いたルインの刃はレエンの首を捉えた。
「貴様の負けだ」
「...そうみたいだな」
勝負の決着がついた二人はゼーレンたちのもとへと向かう。
「ねえ、レエン」
「ど、どうしたのかな」
「なんで負けたのかしら。わたしがあなたが勝つって賭けてたの知ってるでしょ」
「し、しr」
「なんて?」
「すみませんでしたorz」
「あ、いた~」
現れたのは『沈黙』を操る少年、ヴァオス・クーである。
「クーか。何ようだ」
「前に言ってたやつが完成するらしいよ~ それでトヴァがみんなを呼んでこいって」
「あら、もう完成するのかしら」
「そういうことなら先に行かせてもらう」
ルインはフィーとともにクーたちを置いて先に進む。
「あれ~ 待ってくれない感じ~?」
ルインたちがあとから追いついてきたクーたちと進んでいると前方あたりに三つの見慣れた姿が映る。
「きた」
『沈黙』を操る少女、ワルミーユ・シュティレ。
「はやくはやくー!」
『創世』を司る少女、テルティマ・クレアール。
「なかなかに良い出来だ」
『創世』を司る青年、クレース・トヴァリーチ。
三人が囲む中心には不思議な光があふれ出ている泡のようなものが漂っている。
「トヴァ、例のものが完成すると聞いたが」
「どこにあるのかしら」
「ああ。あとは皆の権能を少し注入すれば完成するだろう」
「そうだよ! シュティとクレアたちはもう終わったからあとはルインたちだけだよ!」
「うん」
クレアにせかされてルインたちも権能を目の前の泡に注入する。
するとクレアとトヴァの操作の元、泡は急激に変化をはじめ、しばらくまばゆい光が当たりを包む。
「これでおっけいー!」
泡の変化の終わりとともにクレアとトヴァも手を下した。
「これが『世界』というやつなのかしら」
「随分と小さいな」
ルインたち、源初たちにとって、この何もない空間での暇つぶしと言えばせいぜい戦うくらいである。
けどそれも何千、何万回とやっていくといつか飽きが来てしまう。
そこで『創世』であるトヴァとクレアはそれを解消するために様々なものを作った。今源初たちがいるこの空間でさえ『創世』によるものだ。
「これはどうやって使うのかしら?」
「簡単だよー! この中に入ればいいよ!」
「けどいくら余たちが作ったものとはいえ、皆の力に耐えれるようにはできていない」
「だから入るときは力のほとんどを封印して、新しい体で活動しないといけないよー!」
「たのしそう~」
「うん」
「油断してはだめだよ! 『世界』のなかには強い生き物もたくさんあるんだから!」
「しかし『世界』で死んでも自動的にここに戻るから心配する必要はない」
「雑種ごときに敗北する時点でわれらの負けだ」
「そのようなことはあり得ないけどな」
「誰から入る、?」
「待って! まだやることがあるの!」
そういうとクレアは手を広げ、目の前の泡は一瞬のうちに無数の泡に分裂し、源初たちのまわりを埋め尽くす。
もちろんこの一つ一つの泡は個別の『世界』となっている。
「たくさん」
「さすがだな」
源初たちの反応は様々だが一様に驚いた表情を浮かべる。
「一個だけじゃあつまらないからこっちのほうがおもしろいでしょ!」
「うむ、この一つ一つは当然全く同じ『世界』ではなく、一つ一つが違う法則に従って『世界』を成り立たせている。そのため選ぶ世界によってはそこにいる生物の強さや環境が大きく変わる」
「だからどの『世界』を選ぶかはすごく大事だよ!」
「それなりに格の高いものでよい」
「じゃないと俺様達にふさわしくないからな」
「うん」
「...ルインと...一緒なら」
「いいよ~」
「私もそれでいいわ、どんなところかしら?」
「余もちょうどそのように思っていた」
「じゃあみんながそういうならそれに決定ね!」
そういうとクレアは空間に広がるあまたの泡の中から一つの『世界』を呼び寄せる。
「しゅっぱつだ!」
ほかの源初が反応する間もなく、『世界』からのまばゆい光が源初たちを包み込む。
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