普通の高校生が愛すべき愉快な人達と出会うだけの話。
猫野 おむすび
第1話 ゴキブリ少年
いつもの様に自転車で駅まで向かった。
いつものより1本後の電車でも全然間に合うのだが、
ホームに降りた瞬間、乗ろうと思ってた電車が通り過ぎてゆく様を見るのが個人的にすごく不快なので、
(別に遅れるのが嫌だからとかでは無く、、、今頃この電車に乗れた人々は私より○分前に着けるんだろうなー……という妄想をして勝手に後悔する。)
持久走大会でビリしかとった事の無い私は、重い手足を必死に動かして走っていた。
―――が、結局エレベーター様の魔力に吸い寄せられてしまった。
(やっぱ階段登るよりこっちの方がラク……)
こんな浅はかな考えを読まれたのだろうか、ボタンを押してもなかなか来てくれない。
・ ・ ・
しばらくしてドアが開き、急いで乗り込もうとした最中、女子高生が後ろに並んでいたのに初めて気がつく。
「すみません、ありがとうございます!」
降りる際、開けるボタンを押して待っていたら、先程までスマホをいじっていた女子高生が意外にもハッキリした声をしていたので驚いた。
「……あ……」
とっさに会釈をするしか出来なかった。
──────同じ女子高生でも、雲泥の差である。
……本題は、この後の事である。
エレベーターでのロスタイムを取り戻すべく、猛スピードで改札を通ろうとした、その時。
目の前の男子高校生の肩に、違和感があった。
初めはゆっくりと歩いている少年にただイラついているだけだった。
しかし、彼の横を急いで抜かそうとした瞬間、なにか茶色いモノが私の鼻先をかすめた。
───ゴキブリ?
ゴキブリだった。ゴキブリが触覚を揺らしながら、少年の肩にくっついているのである。
テニスかサッカー部に入っていそうな、爽やかな男子。……でも、その肩にはゴキブリ。
最近の女子は、男子のギャップというものに興奮するらしい。
今まさに、私は男子のギャップ(Lv 100)を目の当たりにしているのだった。
……ゴキブリは、私に向かって手を振るように触覚を揺らし、
また、ゴキブリ少年も私と逆側のホームへと歩いていった。
電車の中では、休日用にセットしておいた目覚ましが大音量で鳴いた。
恥ずかしかった。
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