第9話 孝謙(称徳)天皇(日本:在位749~758,764~770)・後編
歴史上の人物ですので常体を用いています。また、本文中の年月日は西暦・太陽暦に基づくものです。ご了承ください。
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さて、
聖武天皇の娘、つまり孝謙にとっては異母姉妹で、母親は
この姉妹、姉の井上と孝謙との仲はそんなに悪くはなかったのですが、不破と孝謙の仲は最悪でした。というか、この不破さん、中々の陰謀好きだったようです。
そして、そんな不破さんが結婚した相手が、
塩焼王は、742年、宮廷の女官4名とともに投獄され、その後
その理由は明らかにされていませんが、女官たちもともに罪を得ていることから、塩焼王が彼女たちに「接近」した――純粋(?)にスケベ目的だったのか、皇位継承等を巡る何らかの陰謀
そして同時期に、妻である不破も「内親王」の称号を
もっとも、単に夫が風紀を乱しただけなのだったらとんだとばっちりなのですが、おそらく、彼女も陰謀に一枚噛んでいたのではないでしょうか。
745年には赦免されて
そして、淳仁・仲麻呂政権下で栄達し、
仲麻呂が孝謙と対立し乱を起こすと、今度はどっぷり巻き込まれてしまい、仲麻呂とともに捕らえられ斬られてしまいます。
不破内親王(時期は不明ですが、「内親王」の称号は戻されていたようです)とその息子の
孝謙女帝には、憎い相手に変な名前を付ける趣味がある、というのはご存じの方も多いでしょう。後の「
まあ、これは単に悪口というよりも、
それにしても、同じく聖武帝の血を引く異母姉妹をつかまえて、「クリヤノクリヤメ」(台所女中といった意味。「
この不破内親王、歴史上重要な役割を果たしたかというと正直そんなことはないのですが、高貴な血筋に生まれながら権力の主流から外れてしまい、それでも懸命にあがく姿はなかなか興味深いです。関わり合いになりたいとは思いませんけどね(笑)。
妹の方はこれくらいにして、姉の井上内親王。彼女は727年、数え年11歳で
もちろん、斎宮に選ばれるのは名誉なことではあるのですが、藤原氏によって皇位継承権争いから遠ざけられたのではないかという見方もあるようです。
斎宮の任を解かれ、都に戻った井上は、
この他戸親王の存在は、孝謙の後の皇位継承争いにおいて重要な意味を持つことになるのですが、それはもっと後の話。そろそろ孝謙女帝に話を戻しましょう。
再び天皇となった孝謙は、
これを道鏡自身の野心と見るか、彼に惚れこんだ女帝の献身と見るか、様々なご意見があることでしょう。
また、もう一つ別の観点として、女帝の、道鏡という個人に対してというより、仏教に対する
そもそも彼女の父・聖武帝からして、
娘である孝謙もまた、その影響は強く受けていたことでしょう。
ついには、孝謙は道鏡に皇位を譲ろうと考えるに至ります。そして起こるのが、「宇佐八幡宮託事件」です。
769年5月、大宰府の
これに大喜びした孝謙女帝、和気清麻呂を
これに激怒した女帝が、清麻呂ら関係者に変な名前を付けて追放した、というのは歴史の教科書にも載っていました(今でも?)から、皆様ご存じのことでしょう。
さてこの茶番劇。裏で絵図を描いていたのは藤原氏、というのはほぼ定説となっています。一回目は女帝が喜ぶような神託を奏上し、食いついたところで否定してみせた、というわけです。
女帝が清麻呂らに激怒したのも、単に神託が意に沿わなかったからではなく、彼らが陰謀に加担していたからでしょう。
かくして、道鏡を皇位につけることに失敗した孝謙女帝は、失意のうちに翌770年
次の天皇に立てられたのは、井上内親王の夫・白壁王。道鏡は
しかし、もし道鏡が本当に皇位簒奪を企てていたのなら、それに対する処分としては甘すぎます。やはり、彼が積極的に関与していたわけではないとみるべきでしょう。
さて、孝謙没後の話とはなりますが、白壁王改め
井上内親王は772年、光仁帝を呪詛したとして皇后を廃され、息子他戸親王も皇太子を廃されます。そして新たな皇太子に立てられたのが山部親王。
黙っていればそのうち息子に皇位が巡ってくるはずの井上に、高齢の夫の死を早めようとする動機などあるはずもなく、誰がどう見ても山部の策略です。
井上と他戸母子は、その後さらに冤罪を着せられ、幽閉された上、母子同時に不審死を遂げます。九割九分九厘、山部による暗殺でしょう。
その後、皇位についた山部親王改め桓武天皇は、生涯、井上母子の怨霊に悩まされ続けることとなります。自業自得。
ちなみに、不破はというと、桓武即位後の782年、息子の
さて、話を少し戻しまして、孝謙が道鏡に皇位を譲ろうとした一件。しかし、僧侶である道鏡には子供もいませんから、その後皇位につくべき候補はいないわけです。
孝謙はそのあたりをどう考えていたのか――という点に着目したのが、
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宇佐八幡宮神託事件の驚きの黒幕とは!? ネタばれはしません。悪しからず。
次回はスペイン王国の光と闇、イサベル(イザベラ)一世女王の登場です。乞うご期待!
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