三章 山での攻防 後編 2

 すると細身の男が今度は、ノイマンの顔を踏みつける。何度も執拗に繰り返しながら、

 「おら、どうした!?…何か言ったか?…なら、いつもみたいに野次れよ。ほら、…しないのか、…言ってこいよ!!」

 と言っている。

 テッドや美女は萎縮しており、止めようとしない。

 ノイマンは呻き声を漏らし、やがてボロボロになっていく。

 次第に俺も舌打ちする。ムカムカして仕方がない。

 それと時同じくして、

 再び魔物の咆哮がしている。

 木々の倒れる音もする。

 今までで最も近い場所から、鳴り響いていた。

 「ボアか!?」と俺は気がつき、思わず声を漏らす。

 最悪の事態に陥っていた。

 テッド達も気がついた反応をしている。

 細身の男が踵を返して、さっさと他の皆を置き去りにして逃げようとする。

 だが先にテッドが目の前に出てきて、立ち塞がる。

 「出来るわけないだろう。…本気で置いてくつもりか!?」

 「だから、そう言ってるだろうが!…さっきからアンタは何を言ってるんだ?…お前だって、フォンに言われた筈だろう。」

 「い、言われたよ。…でも、そんな事は望んでないし、今はいがみ合っている場合じゃないだろう。」

 「…どんなに嫌な人でも、やっぱり命を粗末にするのは間違っている!」

 そのまま二人は口論を始めた。徐々に苛烈さを増していく。

 「うるせぇ!!」と細身の男は怒りを露にしたら、手に持った小瓶の蓋を取って、周囲に目掛けて振り回す。

 中身の液体が撒き散る。

 テッドは正面から被ってしまい、動きがぎこちなくなっていた。

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