一章 十年後の解放 3
暫しの後、ーー
俺は、ゆっくりと坑道を歩かされていた。監視員の男達の後ろを付いて進んでいく。
今日の持ち場の場所にまで、戻らされたのだった。
やがて時刻になると、仕事が開始された。
「オラァ!…さっさと仕事しろ!」
と監視員達が鞭を振るい、命令を下してくる。
他の奴隷達は仕方なく指示に従い、作業に取りかかる。
俺も口に広がる血の味を我慢しながら、無心になって手を動かしていた。大きな石を籠に入れて、指定された別の場所に歩いて持っていく。
坑道の作業場は、何処もかしこも緊張感が漂い、監視員達の怒号が飛び交っており、息が詰まりそうな雰囲気である。
「おい、何してる!!…休むんじゃない。」
さらに近くで叫び声が挙がった。また誰かが倒れたようだ。
俺が其方を一瞥したら、痩せ細った男が鞭で叩かれているのが見えた。もう幾度となく見慣れた光景である。もはや同情も情けも、人としての感情は沸き上がらない。
此処にいる奴隷達は、成す術もなく只単に、命令を受け入れていた。ほぼ大半は全てを諦めた目をしていて、心の無い人形の様になっている。
「おい、今の仕事が終わったら、…今度は向こうの、岩を動かすのを手伝うんだ。」
ふと、近くにいた監視者の男が大声で指示する。
俺を呼んでいるようだ。
監視者の男は、すぐに別の籠を指差していた。
籠の中には、先程よりも大量の石が積まれていた。
「…わかった。」と俺は嫌々ながら頷き、言われた作業へ移った。
すると、またすぐに別の監視員にも「終わったら、今度は荷車の岩を運ぶだ。」と指示してくる。
その後にも、再び同じ事を次から次へと何度も繰り返されていた。
「っち。…」
俺は堪らず、強く舌打ちしていた。やけに最近は、あらゆる持ち場を掛け持っていた。凄く嫌な気分を感じている。
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