一話 序章 地獄までの夢 3

 馬車の中で、初老の男は話掛けてきた。名前はキールといい、お金を貸す仕事をしており、最も有名な人らしい。


 彼は此方を見ながら、話しかけてきて、


 「お前、名前は?」


 「…ヒルフェ、です。」


 「お前の両親、父のリードと母のマイルは多額の借金をしたが返済せずに逃げてな。…お前には働いて返してもらう事にした。」


 「まぁ、言ってもわからないだろうが。」と、最終的に小さくぼやいていた。


 幼い頃の僕は首を傾げる。実際に訳が解らずにいた。


 それから彼の住む街へ着くと、否応なしに炭坑で働く事を強要される事になった。


 暗くて狭く埃っぽい洞窟の中での力仕事の作業である。失敗すれば、屈強な男達から鞭を振るわれ続ける。


 それは僕が泣こうが喚こうが、全く構う事はなかった。


 ー嫌だ、痛いよ!


 しかし状況が変わるわけでもなく、誰も止めようとしない。他の労働者も見てみぬ振りだ。


 ー誰か、誰か助けて!!


 何度、呼び掛けても返事はない。


 また鞭を振るわれ、痛みで僕は悲鳴をあげる。


 ーもう嫌だ。疲れた、……疲れたくない。


 それは心からの願いだった。


 もう見てられない。と今の僕は目を反らす。


 すると、ぐるりと世界が回り、ーー


 そして僕は目を覚ました。

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