第10話 セレス...それ鳥じゃないから

僕みたいなゴミをパートナーにしてくれたマリル。


お金が全く無いのは解っているんだ。


それなのに、自分は古い服を着ていても僕には新品の服を買ってくれた。


美味しいご飯も食べさせてくれた…


だから僕も『恩を返したい』


マリルは僕にとって『唯一の大切な人』だから。


マリルはまだ寝ている。


凄く可愛いい。


何時までも見ていたいけど、今日僕は狩りに行く。


毛布と布団をそっとかけ直した。


『マリル行ってくるね』


そう言葉には出さずに僕は出掛けた。



◆◆◆


初めて一人で外の世界に来た。


話しで聞いていた、緑は何処までも綺麗で、空も本当に青かった。


マリルの為に今日僕は初めて狩りをする。


とはいえ、僕は、所詮、廃棄された存在。


本当の勇者みたいに強ければ良かったのに…


凄く弱い、精々が大きな鳥とトカゲが狩れる程度だ。


龍とか狩れない。


それにどの生き物が高額な物なのか解らない…


仕方がない、片っ端から狩っていけば良いよね。


取り敢えず『聖剣覚醒』と。


デュランダルは偽聖剣とはいえ、聖剣という位だから、覚醒させれば少しは使い物になるような気がする。


思った通り、刀身が青く光りキラキラと輝きはじめる。


他には…解らない。


まぁ出来損ないの僕じゃ鑑定でも簡単な事しか解らない。


それに、聖剣の力も100パーセントは引き出せない。


それでも聖剣とつく位だ、偽物でも普通の剣よりは強いよね。


『威圧』


流石に目的の獲物にたどり着く前に弱い動物に会うといけないからこの位掛けた。


目的の鳥とトカゲはをようやく見つけた。


僕は『自動収納』の魔法を唱えた。


『自動収納』これは収納袋を魔法にした物だ。


しかも、倒した存在は自動で収納していく、優れもの。


オリジナルの『袋の勇者』なら魔王城ごと収納出来たという伝説もあるけど、僕は失敗作なのでそこ迄の収納は出来ない。


精々が大きな屋敷2つ分位しか出来ない。


岩場には目的の大きな鳥が無数にいた。


その数は30位、逃げられるといけないから、こっそりと近づき倒していく。


『隠形』


これは気配を消す魔法。


優れた勇者は一瞬で気配を消せるが、僕には出来ない。


だからこそ、こんな魔法に頼らなければならない。


本当に、才能の無さに悲しくなる。


「ぐわぁぁぁぁーーっ」


本当に僕には才能が無い…1羽倒した途端に鳥が声をあげた。


運が良い…もし逃げられたらこの1羽で終わる所だった。


他の鳥も僕を侮ってか襲い掛かってきた。


複数の鳥…こんな存在にも僕は奥義を使わないと勝てない。


「これが奥義…光の翼だぁぁぁぁーーーっ」


無数の光の翼が展開して鳥に襲い掛かる。


結局、倒したのは18羽…あとは逃げた。


勇者の奥義を使ってようやく無数の鳥を倒せる。


自分の才能の無さに悲しくなる。


僕が本物の勇者だったらマリルに楽をさせてあげられるのに…


鳥しか狩れない。


『合計19羽か、これで服とか買えるかな』


無理だろうな、仕方がない。


トカゲでも狩ろうかな。


鳥が居た岩場から少し奥に4匹の大き目のトカゲが居た。


僕に気がつくとトカゲの3匹は逃げて1匹だけ襲ってきた。


『一閃』


簡単に倒せた、まぁ只のトカゲだからね。


初日だし、今日はこの位で良いか?


僕はきっとマリルに依存しているのかな?


マリルに会いたくて仕方がない。


うん、すぐに帰ろう。



◆◆◆


「セレス~っ!ヒクヒクスン…何処に行っていたの~」


泣いているマリルに抱き着かれた。


まさか、探してくれていたのかな…凄く嬉しい。


「ごめん…お世話になりっぱなしだから、狩をしてきたんだ、少しでもお金になればと思って」


目が腫れているし…泣いていたのかな…そうだよな、僕もきっとマリルが居なくなったら泣く…同じだ。


「そう言う事なら…ひくひくグスン、次からはちゃんと言ってからにしてよね…その心配だから」


可愛いと思ってしまう以外に嬉しいと思ってしまうのは良くないよね…


「ごめん」


「もう良いわ、それで何を狩ってきたの?」


「鳥とトカゲ」


「え~と鳥とトカゲじゃ、まぁ今日の夕食代位しかならないわね!換金しに行こう」


「うん」


マリルと一緒に受付に言った。


「あら、マリルにセレスくん、早速何か狩ってきたの?良いわ査定してあげる」


「此処じゃ狭くて出せません」


鳥1羽でも此処じゃきついな…


「何を狩ってきたの?」


「鳥とトカゲです」


「セレス、随分大きな鳥なのね。まさか時期外れだけどロック鳥? 凄いじゃない、1週間の生活費になるわ」


「ロック鳥…それなら此処じゃ少し狭いですね…裏の倉庫に行きましょう」


「有難うございます」



◆◆◆


「そう言えばセレスくん、手ぶらだけど?ストレージ持ちなのかしら」


「はい」


「凄く優秀ですね…やはり、マリルと別れて他のパーティに」


「職権乱用よ!」


「あら、ごめんなさいマリル、それじゃセレスくん、早速出してくれる」


「はい」


僕は収納から鳥を取り出した。


「セレス…それ」


なんでマリルと受付のお姉さんが驚いているんだ。


「セレスくん…それ鳥じゃないから…ワイバーンだから」


なんで驚くんだろう…




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