第3話 【閑話】古の賢者の死

駄目だった…賢者と呼ばれた儂が600年掛っても作れなかった。


若き日に見たあの勇者…他の勇者とは違う『始まりの勇者』


あれから、幾多の勇者と共に行動するも、全てが紛い者にしか見えなかった。


劣化した能力に、女や金権力に固執する姿は滑稽で、見る度に儂を落胆させた。


『あれは勇者ではない』


300年、色々な勇者と付き合った儂が導いた結論がそれだった。


そこから、600年は『本物の勇者』を作る事に没頭した。


悪い事も沢山した。


若き才能ある子を攫い、改造を施し何十という数の少年を殺した。


才能ある少女を監禁して才能ある男に犯させ…子供を取り上げた事もある。


そんな子供も何人殺したか解らない。


結局、最後はホルムニクスの研究に落ち付き、幾つもの生命を生み出す…そして殺した。


この施設の処理場には一体何人の死体があるのか最早解らない。


だが、儂はもう一度会いたかったのじゃ…儂が賢者でも無くまだ少年だった頃憧れた英雄。


始まりの勇者みたいな勇者に…


これで終わりじゃな…Y-00421 この子も始まりの勇者に及ばぬ。


結局は廃棄するしかない。


こんな物は到底、始まりの勇者に及ばない。


もう儂は死ぬ…秘薬を使い…延命してきたが終わりが来たようじゃ。


結局儂は『始まりの勇者』を作れなかった。


ここ迄手を汚した儂は、地獄落ちじゃな…


もう始まりの勇者様には会えないだろう…ただただ会いたかった。


「…」


古の賢者アレスは手を汚しながら、最後は1人寂しく命を終えた。

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