第11話

「どういうことか説明して」


 わたしがマークちゃんに詰め寄れば、笑みが返ってくる。


「笑ってないで教えなさいよ」


「大したことはしてません。ただ、欲しいものができたら、来るんじゃないかなって思っただけです」


 ワタシにもほしくてたまらないものがあるからわかります。


 そんなことを言いながら、マークちゃんはわたしを指で突っついてくる。わたしは、静かに距離をとることにした。いつ抱きつかれてもおかしくなかったしね。


「それで、オープンチャンネルで通信を行ったってわけ」


 通信にはそれぞれチャンネルがある。メアドみたいなもんで、知らないと通信を行うことができないし、パスワードがかかっていることさえある。だけど、オープンチャンネルはそうではない。どなたでも使うことができるチャンネルで、鍵もかかっていない。まさしくオープンなチャンネルである。


「でも、相手が聞いてなかったら意味ないんじゃない?」


「オープンチャンネルなら、誰かがしゃべってたら光るはずだぜ。だから、通信機の近くにいるならチャンネルを回すさ」


「後は祈りましょー」


 サッと近づいてきたマークちゃんが、わたしの手をとって握る。包み込むような手は意外と力強くて、何度振り払おうとしても離れなかった。


 わたしよりもちっこいくせになんて馬鹿力だ。


「しっかし、お前さんのやりたいことはわかったが、冗談が上手いな」


 がはははは、と豪快に笑ってハーキスが言った。


「冗談?」


「そうさ。自爆できるアンドロイドなんて噂の中の存在さ。だってそうだろ、仕えるやつが反抗してきたらどうすんだ?」


「確かに」


「もっとも、銀河連合とロボットが戦っていたにいたっていうがな」


 わたしはマークちゃんを見た。目をつぶって唇を突き出し、キスする五秒前みたいな顔している彼女を見ているとアンドロイドには見えない。戦争用だなんて、まさか。


 だけども、マークちゃんは自爆できる。ひとたび炸裂してしまえば、この世が終わりを迎える。


 わたしと一緒にいたいがために嘘をついているという可能性もある。


 確かめる方法は今のところはない。


「たぶん、本当だよ」


 わたしが言うと、ハーキスがぎょっとしたように席から飛び上がった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る