第2章 ミッションα、潜入せよ。

第27話 2123年、次元をかける少年130キロ。

「今は、西暦2123年です。あなたの年齢は123歳です。

体重は130キロです」

主治医は僕にそう告げた。


僕は朱雀健一郎130キロ。今病院のベッドの上に寝転んでいる。

僕の横にはお医者様がいる。この状況を総合すると、僕が何かの怪我をおって病院い担ぎ込まれたということであろう。


「朱雀健一郎130キロ様、おはよう、気分はどないだ?」

「最悪です」

「それはごめんくさい」


主治医は丁寧に頭を下げた。主治医は、小柄で肩幅のがっしりした、筋脳タイプだ。


「自分の名前、思い出せるか?朱雀健一郎くん」

「いえ、何がなんやら」

♠️答えいってるじゃん。

「じゃあ質問な、年齢は?」

「23歳」

「仕事は?」

「タクシードライバーです」

「好きな女性のタイプ誰?」

「う、脳にモヤがかかって思い出せないです」

「じゃあ、質問をスキップするな」


「生年月日は?」

「1999年12月25日です」


主治医は、腕組みした。


「今年は、2123年や、100年ぶりに2123年の今年、阪神タイガースがリーグ優勝した。みてみい」


主治医が、窓をあげると、太鼓の音と、大勢の人の歌声が聞こえてきた。

「秋祭りですか?」

「優勝パレードや、100年前にもあったやろ、阪神優勝。あれは阪神の歌、”六甲おろし”や、知ってるやろ」

「さあ、野球には疎いもので」

「そうか」

主治医は肩を落として残念そうにつぶやいた。


「センセは、阪神ファンなんですか?」

「いや桜ジャパンのファンや、関西在住やけど、親父も僕もラガーマンなもんで」


「そんなことより、どうして僕は病院にいるのですか」

「それは、『アレ』や」


先生は腕組みして、思考を始めた。


「先生に変わり、私が説明いたします」

背筋をピンとのばした、メガネをかけた看護師さんが病室に入ってきた。

ピチッとした緑の制服から、巨乳がはち切れそうだ。


「わたくし、医療チームリーダのRAMと申します」

「あ、はい、よろしくです」

「朱雀さんは、スキー事故で転倒され、そのまま保存療法に入りました。自ら手術を拒否されたので。それで冷蔵室で保存されて、100年間熟成された後、たった今治療が終了したのです。我々は、朱雀さんが健康体であるのを確認してから、冷凍から常温保存に切り替えました。現在は西暦2123年です。あなたの体の70パーセントは、新しい細胞に置き換えられています。何かご質問は?」


♠️やべえ、質問ありすぎて、脳がフリーズだ。

主治医の先生も腕組みしたま黙って考えている。


「先生は、寝てるだけのなので、ほっときましょう」


RAMさんに言われる通り、一つの質問が浮かんだ。

「ここは地球ですか?」

「良いご質問です。地球であって地球でない。西暦2023年に100年生身の人間を生きたまま保存する技術はございません。朱雀様は何らかの方法で、我々の8分の5次元の世界に次元ジャンプされたものと推測されます」

「そうですか、僕には理解不能です」

「なんで、あたな次元スキッパーなんでしょ?」


♠️”次元スキッパー??”理解できない言葉が次々で、頭が混乱だ。

しかし、僕は諦めた。いろんなことを諦めたら苦しまなくて済む。


「明日から僕はどうしたらいいんですか?」

「退院証明書を発行しますから、西宮のハローワークで求人登録してください。

我々医療チームは、今日であなたの治療を終了します。お疲れ様でした。

これ治療費100年分の請求書です。利子が18パーセントでリボ払いになっていますから、毎月のご返済よろしくお願いします」


僕は次の日、ハローワークで、働き口を紹介されて、

担当者がいうがままに、秒で仕事が決まった。


僕は王立航空隊、シルバーアローズのパイロット候補生として、次の日から訓練を受けることに決まった。事故前の人生から数えて(事故前の人生が本物だとして)生まれて初めての就職だった。

続く。







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