第18話 王子は蜂蜜の香りを漂わせて。

♠️僕は、朱雀健一郎19歳

身長176センチで。

体重は120キロだ。


♦︎「すみません!」


♠️見た目からして丸く

”不思議の国のアリス”

に登場する、玉子人間、

ハンプティダンプティ

そのもののシルエットをしている。


♦︎「ドアを開けてくださる?」


♠️おかげで僕は”玉子”というありがたい

あだ名を頂戴した。

その”玉子”がいつの間にか昇格して

”王子”になっていた。


ただし、”ヘタレ王子”。

人は僕のことを”ヘタレ王子”と呼んだ。


♦︎「どんどんどんどんどん💢」


♠️僕はなぜか女子にはやたらモテる。

僕の体はハチミツの香りがするらしい。

その一点において僕は男子に疎まれ、

女子には超人気者である。


♦︎「ドア、お開けになって!」


♠️それなのに

僕は生まれてから彼女ができたことがない。

彼女どころか、女子と手を握ったこともない。


なぜか?


♠️僕は女性アレルギーで、

女性が3メートル以内に来ると、

強いアレルギー反応を示し、

痒みを伴う体に赤い発疹ができる。


小学校のフォークダンスで女子と当たった時は、

呼吸困難に陥り、救急車で搬送された。


♦︎「どんどんどんどん」


♠️そんな僕は先月、たった一人の家族だった

母を亡くした。

世界でたった一人僕のことを肯定してくれる存在が母だった。

僕には頼る兄弟も親戚もいない。

もはや生きる希望もお金も住む家もない。


♠️だから

20歳の誕生日に死のう思った。

そして今日クリスマスの、

12月25日は僕の誕生日。

今日を持って僕は自分の人生に終止符を打つ。


♦︎「どんどんどんどん!」


♠️♠️そんな大切な日に、

タクシー運転手をしている僕のスマホに、

最後の客から、タクシーの依頼が入った。


♠️ふと外を見ると、誰かが、

僕の大切な商売道具、会社から借りている、

ポルシェ718ケイマンの助手席のドアを

ゴリラみたいな怪力で叩いている。


♦︎「ここ開けんか、ゴラア!!」


♠️僕は、助手席のドアを開けた。

転がるように、助手席に乗り込んだ女と目が合った。


♠️「こ、こんにちは」


♠️その瞬間、僕の左がわの肩から二の腕にかけて赤い発疹が吹き出した。

続く





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