第17話 マッチョ♡にハートズキュン☆
「お嬢さん、
名刺まで受け取っておいて、それはないんじゃないですか、
そんな毛嫌いしないでくださいよ、
あんな小僧にあなたの何がわかりますか、
僕といきましょう」
マッチョ郷田は、
私の右手の手首をぎゅっと掴んだ。
なんという握力。
ハートズキュンだよ。
握力の強い男は性欲も強いと聞いたことがあるが、
ほんとかな?
「いたい♡」
私はしおらしく声を上げる。
「そんなのだから、クリスマスイブの夜に一人なんですよ」
マッチョ♡、その通りなの。
私は、心の壊れた、誰にも愛されない寂しい女なの。
せめて今夜だけでも、
あなたの腕の中で眠らせてちょうだい♡
なーーんて。
本来ならここで私は、マッチョのやり口に陥落するのだが、
あいにく今夜はお仕事なの。
脅迫まがいのトークで女に罪悪感を植えつえるやり口。
元恋人と同じだよ。
そうその通り。
マッチョは正しいわ。
そのやり方で私は簡単に落ちちゃうからね♡
でも、あなたと”今度”はないの。
暴力と暴言で、私が無力であると罪悪感を植え付ける。
すっかり私の心を丸裸しておいて、
結局、甘い言葉と高額なお金で私を支配しちゃう。
しかも支配されて、
心も体も、
がんじがらめにされていることに喜びさえ感じてしまう私。
なんて罪深いの私たち。
そしていつも、
マッチョの肉布団に包まれて、
最悪の結末の迎えるのはわかっている。
朝になるとマッチョはいない。
この妄想、ぞくぞくするわ。
しかしながらいつも私は、バッドなタイミングで、
マッチョとかかわってしまうんだ。
だって、今夜はお仕事だもん♡
「あーれー♡誰か!助けて!」
私は、あざとい声を上げた。
数人の男性が振り向いてくれる。
優しいのね、みんな♡
でも誰も助けに来ない。
いいのよ、わかってるから♡
本当わね、
体を回転させてマッチョの手の手首を捻り上げるくらいわけないの。
なぜなら、私のオリジナルの右手は事故で失われていて、
その代わりメタルソリッド社の最新型右腕が嵌め込まれているから。
握力はアントニオ猪木を上回る70以上に設定されてて、
マッチョの手首くらい、簡単に捻り潰せるから。
私は、マッチョの手を軽く振り解いて、
マッチョの方を振り返りもせず、
一直線に、ヘタレ王子の運転する、
ポルシェ718ケイマンの方に走った。
両足は私のオリジナルだ。
走るとくたびれる、
左腕と同じ重量に抑えてある、
メタルソリッド社の右腕を思い切り前後に振って
だっしゅだ!
「はあはあはあはあ」
私は肩で大きく息をしながら、
ポルシェ718ケイマンの、ドアを開けて
転がるように助手席に乗り込んだ。
ヘタレ王子は、完全にフリーズしていた。
眉の下まで伸びた不潔な前髪の間から、
死んだサカナみたいた目で
ヘタレは私を見た。
「あ、こんにちは」
ヘタレは言った。
”今夜こいつと・・・・やだな・・・”
続く
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