第7話 私の愛おしい弱い気持ちたち
静かなジャズミュージックが流れる、
綺麗にクリスマスデコレーションが施された店内では、
着飾った人たちが上品にお酒を酌み交わしている。
私は、目を閉じて心を凍らす儀式をしていた。
体を硬くして、細くて長い息をする、そうするとすっかり心が凍りつく。
私は、すべての感覚を遮断して、何も感じない妖艶な夜の蝶に変化する。
しかし、この日はなかなか心を閉じることができなかった。
閉じようとすればするほど、逆に
心の井戸の奥に閉じ込めていた感情が次々湧き上がってくる。
つらかった。悲しかった、怖かった。
私の愛おしい弱い気持ちたち。
ほっておいてごめんね。
ウエイタが注文をとりにきた。
私は、漸く心を凍結して、ウエイタに微笑みかけた。
「ご注文な何にしましょう?」
「ジンを?」
ウエイタは、笑顔で聞き返した。
「ジントニック?」
「いえ、ジンだけをグラスいっぱい。クラッシュした氷をたっぷり入れて、
ライムを絞ってくださるかしら」
私は上目遣いで、ウエイタを見た。
「承知いたしました」
若いウエイタは耳を赤くして、ふらふら足取りで厨房に戻って行った。
続く
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