第4話 クロノスタシスな午前5:55、おしまいの朝。
”5:55”
どれくらいの時間がたったのかわからないけれど、窓の外は暗いままだ。
目覚まし時計を見ると表示は午前5:55分のまま。
まるで私が時計を見るまで時間が止まっていたかのように、目の前で5:55分が5:56分に切り替わった。
5:56を合図に、東の空がまるでビデオの早回しのように明るくなっていく。
私が見てない間、夜が待っていたみたいだ。
そう思ってもう一度スマホをみるとつながっていた通話の表示が目の前で切断された。この世で誰ともの繋がりのない誰かと、自分が一瞬繋がった見えないラインは
二度と繋がらない。
私は、とても微妙な違和感を感じていた。
突然、けたたましいアラーム音が、目覚ま時計から鳴り出した。
何かが、カタンと音を立てて切り替わった気配がした。
私は目覚まし時計をとめて寝袋をから這い出て、窓を全開に開けて。凍えそうなクリスマスの空気を肺いっぱいに吸い込んで、息を止めた。東の空は赤く染まり朝焼けが始まる。
”おしまいの朝だ”
リビングに行き椅子に座って対面の席に座っている大きなくまの“プーさん”のぬいぐるみをお腹に抱いて、小さな目覚まし時計の中でスローモーションのようにゆっくり動く細い秒針を目で追いかけた。
いつもより秒針がゆっくりと動いている気がする。今まで気が付かなかった。時間なんて、自分の気分の持ちようでなんとでもなるものなのだろうか。
私はスマホを開けて仕事場のダイヤルをタッチした。
「はい“ごきげん探偵事務所”です」
今年65歳になる、オーナーの田部八重子が電話に出た。
探偵事務所というのは仮の姿で、本当はコールガールの斡旋事務所だった。
八重子はかつて世界を股に掛ける大スパイだったという噂だが、
今は、働くあてのない、いく場所のない女性を金持ちの裕福な男性に斡旋するコールガールの事務所を経営している。
続く
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