第3話 スケヴェルフ騎士
「………」
大陸の至る所で今も男たちが女に犯されて涙を流している空の下、物憂げな表情を浮かべながら、穏やかな海岸線で潮風に当たりながら、果てまで広がる広大な海の水平線を眺める一人の女が居た。
「姫様…………オルガス姫! どうされたのです? 海を眺められて」
浜辺に佇む一人の女。
「いや……なんでもないよ。ただ……海を見て心を落ち着かせていただけだ」
「姫様……」
「大丈夫だ」
肩口まで伸びた髪は一つにまとめて結い、その眼光は鋭さと共に切なさを含めている。
全身を白銀と紋章が刻まれた甲冑とマント。そしてその腰元には神々しい存在感を放つ聖剣を携えている。
そして何よりも特徴的なのは、そのエメラルドの瞳と、人間とは異なるその尖った鋭い耳。
「それより昨晩、空から落ちてきた光……何か分かったか?」
「いえ、何も……地元の漁師たちも目撃したとの話は聞きますが、ソレは海に落ちたようで、ですが光もすぐに消えてその後は……」
「そうか……空より落ちた星……一体何だったのだろうな」
部下の報告を聞いて溜息をつく、オルガス。すると、目の前の部下はまだ話が終わっていないのか、どこか言いにくそうな表情を浮かべながら、
「はい……あ、あと、姫様」
「なんだ?」
「女帝様から手紙を―――」
「必要ない」
しかし、オルガスは直ぐに遮った。
「大方、性処理のための小姓や奴隷を送る等の話だ。母も私が未だにヴァージンなのをご立腹のようだ」
「姫様……」
「だが、私はそんなものは必要ないさ。心から愛する男……惚れた男と出会ったらその男を抱こう」
端正なキリッとした顔でウインクしながら微笑むオルガスに、部下の女は苦笑した。
「今どき、姫様ぐらいじゃないですか? 婚姻を交わせる年齢に達しても未だにヴァージンな方は。大体、姫様の好みの男ってどういうのですか? アソコが大きい人とかですか?」
「ん? そ、そうだな……って、男性はアソコではない! その……なんだ……やはり、守ってあげたくなる子で……でも、自分の意思や心はしっかりとしていて、一生懸命な子……あとは、小柄で年下などはいいな……」
年頃の女らしく、少し照れながら好みの男のタイプについてタドタドしくも話し出すオルガスであったが……
「……ん?」
「?」
その時、オルガスが浜辺に打ち上げられている何かに気づいて眉をひそめる。
部下もまたその様子に気づき振り返ると、そこには……
「ッ!? お、おい、あれは!」
「……えっ? 人です! 誰かが倒れています!」
浜辺に人が打ち上げられている。そのことに気づいたオルガスと部下は慌てて駆け寄ると、そこには黒髪の、青年と少年の狭間ぐらいの年齢と思われる男が倒れていた。
見たことのない服装。手触り。いったい何者かと思ったのも束の間、それどころではないということにオルガスは気づく。
少年の口元は呼吸をしていなかった。
「おい、しっかりするのだ! おい! ……まだ顔に赤みはあるが……呼吸をしていない……このままでは……」
見ず知らずの男。何故ここに居るのか、何があったのかは分からない。
だが、このままでは、男が死んでしまう。
そう感じたオルガスは、意を決して、男の首を持って、軌道を確保。
「姫様!」
「時間がない、ベロチュー呼吸をする」
「ッ!? そんな、姫様! それなら、私が!」
「心配要らない。実物は初めてだが、模造品で一応の所作は身につけている。お前は濡れているこの子の服を脱がせ」
「え、は、はぁ。ゴクリ……ごめんねぇ、坊や。これは救急対応……服を脱がせッ!?」
髪を掻き揚げて、男の小さな唇に顔を近づけ、オルガスは口を開ける。
だが、同時に、二人はあることが頭を過ぎった。
(ッ、この男の子の……か、可愛いなこの子……唇も柔らかそうで……ゴクリ……こ、好みだ……って、ちょっと待て!? こ、この股のモノは……)
(うわっ、この子の……冷えないように服を脱がせてみたら……お、おっき?!)
だが、今は雑念を捨てて人命救助をと、オルガスはすぐに作業に取り掛かる。
「っと、まずはこっちだ。軌道を確保。顎をくいっと持ち上げて、 口を大きく開き、この口の中の喉奥に……パクッ……舌を入れてペロペロジュボジュボ刺激! あむ、じゅぶ、れろれろじゅぶり!」
「―――――――――ッ!!??」
「ぷはっ、そして余った手で、マッサージだ……お、おぉ、こ、この手触りはぁ!?」
それが、意識不明、呼吸が見られない男に対して行う蘇生方法であった。
「姫様、今、この子の体がビクンってなりました!」
「あむ、ん、じゅぶり、ん、じゅぶじゅぶじゅぶり、ぷはっ! ふう……もうすこ……ッ!?」
「……えっ!?」
その時、オルガスと部下の女は見てしまった。
裸にした男の身体の「変化」に。
「な、ななな、なんですか、この、お、大きさは! さらに大きく……こ、この間、隊の皆で買った男娼の誰よりも大きい!」
「ば、か、な……こ、これが……男の……」
「いえいえ、姫様! こ、こんな、大きさ……ありえません! わ、私がこれまで抱いたことある男も、せいぜい小指ぐらいで……こ、こんなの……」
この世界の一般的な男の基準から見ても規格外の大きさの『あるモノ』に驚愕してしまう二人だったが、今はそんなことを気にしている場合ではないと、慌てて蘇生を再開。
「ひ、姫様……こ、交代……しましょうか?」
「だだ、ダイジョウブだ。私は、ここ、こんなことで心を乱したりは……」
「いえ、そうではなくて……い、一回だけ……味見したいな~って」
「ぺろぺろ、ッ、ふざけるな! 寝ている間に男を襲うのはやめろと言っているであろう! 例えこの世界が許しても、私の隊では男への暴行は許さないと言っただろう!」
「ぶ~、分かりましたよ~……」
雑念を払い、懸命に男の蘇生を試みるオルガス。そしてついに……
「かっ、はっ!?」
男がベロチュー呼吸から息と同時に海水を口から吐き出して意識を取り戻したのだ。
「んぐっ、ん、ん、……ぷはっ、しっかりしたまえ。おい、私がわかるか? おい!」
懸命に声を大きくして男に声をかけるオルガス。
すると、男は……
「うぐっ、がっ、こ……ここ……は? 俺の宇宙船……」
「ふう、良かった……もう、安心したまえ」
男はまだ事態が分かっていないのか、意識はハッキリしていない。
だが、ウッスラと目を開けて声を発する男にオルガスは安堵した。
そして、
「私の名はオルガスだ。君の名は?」
嫌な顔一つせずに微笑むオルガスに対して、男は……
「タック……タック……ヲネショータ……」
今後この大陸を大きく揺るがすことになる男が現れた瞬間だった。
そして……
(ッ!? な、なんだ? やっぱりこの子、か、かわい……熱い……身体が、胸が……か、下半身が熱い……)
オルガスの体に異変が起こった瞬間でもあった。
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