第10話:幸せのあとの予期せぬ出来事。
昨夜の僕の愛の告白の余韻を引きずったまま、次の朝。
紗凪ちゃん・・・紗凪と朝、顔を会わせることがなんとなく気恥ずかしかった。
「おはよう・・・紗凪・・・紗凪って呼んでも?」
「うん・・・いいよ愛彦・・・愛彦って呼んでも?」
「いいよ・・・」
「紗凪、昨夜のこと夢じゃないよね」
「夢じゃないと思う・・・」
「僕たち恋人同士でいいんだよね」
「いいと思う・・・」
「でも、ああいう大事なことは直接言って欲しかったかな」
「ごめん・・・なかなか勇気がでなくて、気持ち的に切羽詰まっちゃって」
「もう一回、言って?・・・私の前でちゃんと言って?」
「え?・・・今?・・・バス来るよ・・・それに他の乗客もいるし・・・」
「言って・・・言ってくれなきゃ、ボツにするよ」
「いや、いや、いや、昨夜OK貰ったのに、それはないでしょ?」
「じゃ〜言って・・・ほら、言って!!」
「分かったよ、言うよ」
(やっぱり尻に敷かれてるし・・・)
僕は周りを見渡して、他の乗客になるべく聞こえないよう改めて自分の
気持ちを彼女に伝えた。
「あの・・・僕でよかったら付き合って・・・じゃなくて・・・」
「え〜と」
「頑張って」
「紗凪・・・僕だけの彼女になってくれる?」
「恋人になって欲しいんだ・・・いい?」
「いいけど・・・じゃ〜私を泣かせたりしないこと」
「いつでも私のそばにいること」
「私にウソをつかないこと」
「あと、これはおまけ・・絶対浮気しないこと」
「守れる?・・・誓える?」
「うん、守る・・・全部誓う・・・紗凪に誓う」
「じゃ〜いいよ」
そう返事して紗凪は笑った。
「本当はね、私、愛彦とお友達になった時から君のことが好きだったの」
「でもいきなり恋人になってって言えないでしょ?」
「だからお友達になってもらったの」
「でね、いつ愛彦から恋人になってって言ってくれるのかなって思ってて
・・・でもなかなか言ってくれないから・・・」
「愛彦、もしかして私のこと、なんとも思ってないのかなって・・・」
「そんな訳ないよ・・・僕は紗凪が転入してきたあの日から、ずっと紗凪に
好意を持ってたんだよ」
「友達になってって紗凪に言われた時は飛び上がるほど嬉しかったんだ」
「そうなんだ・・・あはは、私たちバカみたいだね」
「ずっと想ってて、昨日までお互いの気持ちに気づかないなんて」
お互い後手に回っていたことを顔を見合わせて笑った。
やがてバスが来て僕たちは仲良くルンルンラブラブで学校へ。
昨日までの僕たちとは違う。
クラスで噂になったことが結局現実になった。
だから僕は学校にいる時、授業中以外は教室でもどこでも紗凪と一緒にいた。
そばに誰がいようと気にしなかった。
まじでそうなると、もう誰も僕たちのことをウワサする連中はいなくなった。
こいつら付き合ってんだって分かったら、一気に興味が失せるんだろう。
疑惑があるから、みんな興味を示す。
ことが発覚してしまうとみんな興味がなくなるみたいだ。
そう言う意味じゃ僕たちは自他共に認めた恋人同士。
だから帰りも紗凪と一緒。
誰はばかることなくラブラブで帰っていた。
ふたりでバスに乗ってバスの中で肩を並べて、そしてバスを降りて
マンションまでダベりながら仲良く歩いて帰っていた。
幸せだった・・・それがある日のこと。
マンション半ばまで来た時、紗凪の様子が急におかしくなった。
「愛彦・・・ちょっと・・・」
「私・・・おかしい」
「なに?どうしたの紗凪、大丈夫?」
紗凪は苦しそうに、その場にしゃがみ込んだ。
紗凪がしゃがんだから僕もしゃがんで紗凪の背中を抱いた。
「愛彦・・・苦しい」
「まじで?、大丈夫なの?」
「ずっと出てなかったのに・・・」
「なにが?・・・なにが出てなかったって?」
「発作・・・」
「発作?」
紗凪の息がどんどん荒くなって、おでこから汗が噴き出し始めた。
「胸がドキドキする・・・苦しい、助けて愛彦」
「すぐに救急車呼ぶから・・・」
僕は訳がわからないまま、すぐに119番に連絡した。
「救急車、救急車お願いします、早く・・・場所は・・・」
紗凪はもうしゃべることもできす、その場に倒れこんでしまった。
「紗凪、救急車呼んだから、すぐ来るからね、がんばって」
僕はこの状況にただ焦るばかりだった。
つづく。
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