ため息の行方。〜相合傘〜

第5話：仲里さんの転入の理由。

長い沈黙は絶対マズいよなって思った僕は適当な話題を仲里さんにふった。

「仲里さん・・・あの、ひとつ聞いていいですか？」

「なんでしょう？・・・」

「なんで今の学校に転入して来たんですか？

「以前の地区の高校へは進学しなかったのかなって素朴な疑問」

「普通さ、父親の転勤とかでしかたなくって場合が多いじゃないですか」

「仲里さんもそうかなって思って・・・」

「牧村くん、人の話聞いてます？」

「え？」

「私、お父さんいないって言いましたよね」

「あ、そうでした・・ごめんなさい、うっかりしてた・・・」

「ちゃんと人の話聞いてくださいね」

「分かったでござる」

「ほらまた・・・もう癖になってるでしょ、それ」

「つい出ちゃうんです」

「それより転入した理由ですよ、仲里さん」

「そんなに知りたいんですか？」

「はあ、差し支えなければ・・・話したくなかったらいいですけど」

（なんでもいいから話を繋ぎたいんだ・・・）

仲里さんはひとつため息をつくと転入した理由について語りはじめた。

「あのね・・・私が転入した理由なんですけど・・・私、前の中学校で

イジメにあってたんです」

「え？イジメ？・・・まじで？」

「仲里さんイジメに遭う様なタイプには見えないですけど」

「中三の時、イジメにあってる子がいてね、それを見て見ぬ振りできなくて

よせばいいのに、イジメをしてる人たちに文句言ってやったんです

売り言葉に買言葉で「あななたち最低の人間ね、みんないなくなればいいんだ」

って言っちゃったんです」

「それがきかっけで私もイジメに遭うようになっちゃって」

「それでも最初はそういう理不尽な人たちに負けちゃいけないって思って

頑張って立ち向かってたんだけど・・・」

「向こうは、多勢に無勢・・・イジメのグループだから・・・」

「毎日のようにイジメが続くから・・・それで私学校を休むようになったの」

「ようやく中学を卒業してホッとしたんだけど、心に傷が残っちゃって・・・」

そうかイジメが転入してきた原因だったんだ・・・。

だから、今でも仲里さんはあえて友達を作らないのかもしれない。

仲里さんが転入して来た頃は、女子の誰かが彼女のそばにいたりしたけど、

慣れてくるとそれもなくなって来てるよな・・・。

今はひとりでいることの方が多いのは、人を避けてるからなんだ。

自分から進んで同級生と関わらないようにしてるのか・・・。

きっとイジメを受けていた時のトラウマがあるんだろうな。

なんて僕は勝手に想像した。

そう言う意味じゃ仲里さんは孤独なのかも。

だったら余計じゃん・・・僕が彼女を守ってあげないと・・・。

「あのですね・・・あの・・・牧村くん」

「はいっ？」

「え〜と・・・ああ・・・なんでもないです」

「え？そういうの途中でやめちゃうのってめちゃ気になるんですけど」

「ほんと、なんでもないですから」

「なんでもなくないから話したいんでしょ？」

「そうですけど・・・」

「このさい、なんでも言ってください、僕にできるようなことなら、

なんでもしますから・・・できないことは無理ですけど」

「でもこういうことってすごく勇気がいるんですよね」

「そんなに勇気がいることなんですか？」

「図々しいお願いだから・・・」

「迷惑だから今後自分には声をかけないでくれって言いたいんですか？」

「違いますぅ・・・それ逆です」

「逆？」

「じゃ〜言いますね・・・」

「牧村さん・・・よかったら私とお友達になってくれませんか？」

「は？」

つづく。