僕だけの…
甲斐てつろう
#1
人を見る目だけが俺の取り柄だ。
学生の頃から俺は関わる友人を選んだ、ロクでもない奴に影響されて人生を台無しにしないためだ。
関わって来た友人はみな頭も良く品行方正であったため中学まではそこそこ楽しい時間を過ごせた。
しかし問題は高校から。俺は人を見る目だけが取り柄、つまり他の能力は全くと言っていいほど低い。勉強もスポーツも出来なかったため仲良くしていた友人と同じ高校には進学できず前述したロクでもない奴らがわんさか通う高校に行ってしまった。
その結果孤立。ロクでもない奴らは寄ってたかって俺を虐めた。勉強もスポーツも出来ない事を似たような奴らに馬鹿にされ屈辱的な日々を過ごしたんだ。
それを両親に相談した所こんな返答が。
「人を見る目はあるんだから良いと思える人と出逢って一緒に過ごしなさい」
そうだ、まだ人生は始まったばかりなのだ、高校の奴らなんて今後の人生では一切関わる事はないだろう。
その想いで俺は必死に良いと思える人を探した。
そしてとうとう高校を卒業する頃に出逢った。その人は夜の繁華街の外れの方で密かに人気となっている地下アイドルだ。
その名は「湊さくら」
汚い芸能界の中で一切そのような雰囲気を見せずひたむきに清純なアイドルとしての姿を見せている。
ブログなどからも窺えるがどうやら彼女は素の状態でそれらしい、全く素晴らしいアイドルじゃないか。
枕営業など汚い手で人気を博しているアイドルと違いひたすら努力で頑張り続けるさくらちゃんの姿は見ていて感銘を受けた。
きっと俺の人を見る目はこのためにあったのだ、さくらちゃんを応援しトップアイドルに昇り詰めさせる。それこそが俺のやるべき事。ならばひたすら応援するのみ。
だから今日も俺は地下に籠りさくらちゃんのライブをオタク仲間と共に盛り上げている。
頑張れさくらちゃん、きっと君の努力は報われるからその姿勢のまま頑張り続けておくれよ。
そしていつか君が最高のステージでアイドル人生の幕を閉じた時、俺は感謝の気持ちを込めて君と結婚しよう。両親から言われたように良いと思った人と共に居たい、その最上級が君なのだから。
いつか迎えに行くから待ってておくれ。
つづく
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