二匙め

「恋は実らないほうが美しいわ」

かわいらしい青い瞳を潤ませて、

砂糖菓子のお姫さまが言いました。

お姫さまのことを大好きな王子さまは、

驚いて理由を尋ねます。

なぜ?

まあ、分からないの?とばかりに小首をかしげてお姫さま。

「実ってしまった恋は、ただ熟し、腐り落ちて、朽ちて終わるだけですもの」

けれどね?と、鈴の転がるような声で続けてお姫さま。

「実らなければ、その恋はいつまでも美しいまま、心の中で咲きつづけます。…枯れ果てることなく、時を重ねる度に、美しい思い出の花弁を輝かせて、咲き誇るでしょう」

つまりはね、と薔薇のように頬を染めてお姫さま。

「叶わない恋は美しい。だから、わたくしとあなたの初恋は実らない」

美しい花を胸に抱きながら、新しい恋を咲かせるためにね。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る