第7話.アストラル

「ではお二方、剣と魔法の次は何が知りたいですか?」


 ダンジョンについて知れた、剣と魔法も知れた。


 次は何か、と遥斗が考えると一番聞かなければならないことを思い出す。


「結局、俺たちがいるここはどこなんだ?」

「あれ、サラまだ言ってませんでしたっけ? すいません、忘れてました! ここは世界最難関ダンジョンの隠し部屋です!」


 隠し部屋。遥斗は一度聞いたとは言え、改めてその言葉を聞くと、アニメ・ゲーム好きの兄妹2人はともに目を輝かせる。


「ただですね、お二方自身も分かってるかも知れませんが、ここに2人がいるのは相当イレギュラーなんですよね……」


 まぁそうだろう、と遥斗は思う。


 アニメやゲーム通りなら、隠し部屋は本来、探索の道中で偶然条件を満たしてしまったときにのみ行ける場所なのだから。2人はそう考える。


 ──しかし、ここはそんな簡単な場所ではなかった。


「迷路型になっている最難関ダンジョンのアストラルでは、ボスを確認不可な条件で討伐した際にエクストラボスというものが現れます。このボスもまた、確認不可な条件で討伐します。すると、ここでついに隠し部屋を見つけるための、いわばが完成します。そこからある条件を満たすことで、やっとこの部屋に続く扉が出現します」

「「……とんでもないレア隠し部屋じゃん!!!」」


 遥斗と紬は思わず同じ言葉を叫んでしまう。


 要約すると、一切わからない条件を3つ乗り越えてやっとこの部屋に入れるということだ。


「え、つまり俺等は奇跡的に自宅が最難関ダンジョンの隠し部屋になった、ってことなのか?」

「そういうことです! このダンジョン自体のボスは数十年で倒されるかと思っていましたが、この部屋が見つかるのは、数百、いえ数千年はかかるかと思っていたんですけどね」


 2人は狙ったわけではないが、申し訳ない気分になってしまう。


 しかし、もう吹っ切れているのか、サラは特に気にしてない様子でまた質問してくる。


「質問はこんなものですかね?」

「外の様子が知りたいところなんだが、サラにはなにもわからないんだよな」

「申し訳ないですが、外界を知る権限はないのでどうしようもないです……」

「いやいや、落ち込まないでサラちゃん! いろいろ教えてくれてありがとねっ!」

「いえいえ! これがサラの役目ですから! 話は変わりますがお二方はこれからどうしますか?」


 そう聞かれた時、遥斗にはすぐに1つの不安な点が思い浮かぶ。


(もし1度でもここを出たら、正規の方法以外ではもうここに戻れないのだろうか……)


「それは心配しなくても大丈夫ですよ! この隠し部屋にたどり着けた方のみがもらえる転移結晶テレポート・クリスタルをアストラル付近の地上で使うとなんとここにワープできちゃうんですね! もちろん、使用制限はなし!」

「え、なんで俺が考えてることが分かったんだ?」

「あ、サラがアストラル内にいる限りは、サラは結構いろんなことができるんですよね! 今のがその1つで思念会話テレパシーというものです! こういうのは特殊スキルに分類されるので、取得方法は難しいですが、誰でも使えるスキルですよ!」


 そして、サラは特殊スキルについて2人に話してくれた。


 特殊スキルとスキルには大きな違いがあるようだ。


 それは使使、という点だ。


 どちらのスキルもダンジョン内では使用できるが、ダンジョンを出るとどういう仕様か特殊スキルしか使えなくなるようだ。そうでなければ、魔法とか剣で殺人が容易くなってしまうため、この世界に作り替えた誰かさんの優しさなのかもしれない。


 そして特殊スキルは誰でも獲得できるというのも大きい。


 例えばだが、水魔法を使うには魔法スキルが必須条件だ。しかし特殊スキルは、それ単体でスキルとして使える。


 まだ詳しいことは解明されていないだろうが、いずれ世界中の人々が特殊スキルを重宝する日が来ることだろう。

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