第3話

「ちょっ……!青山?!何してんのっ……」

(やっぱり甘い!もっと……!)夢中で千川の首筋を舐め、その勢いのまま唇に噛み付いた。叫んで抵抗しようと開いた隙間に舌をねじ込む。

その瞬間、より強い刺激が僕を満たす。(こんなにも甘くて美味しいの初めてだ。食事ってこんなに満たされるものなんだ……!)欲望のまま噛み付くようにさらに迫ったその瞬間、千川に突き飛ばされ噛まれた唇には血が滲む。意識は現実に引き戻され、目の前には驚きながらも僕のことを睨み、息を切らす千川が立っていた。「っお前!!!何してんだよ!!!」そうやって詰め寄ってくる千川をぼんやり見つめながら、己の口から滲む血が千川のだったらどれほど……と考えたところで思考が停止し、取り返しのつかないことをしてしまったと悟った。高揚した動悸は一転して冷や汗へと変わり、後退る。

「あ……え……。っごめん!」そう言い残すと、走って保健室を飛び出す。

残された千川は口内に残る鉄の味と普段の青山らしからぬ行動に、しばらくその場に座り込んでいた。

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