第149話 タイトルマッチ 前編

ダンジョンブレイクのときに訪れたダンジョンに来ていた。

入口には本日貸し切りと記載された札と、実力がありそうな探索者が警備していた。


本日のタイトル戦は、ダンジョン内の中層・下層にあるコロシアムで行われるらしい。

…ダンジョン内でタイトルマッチって前代未聞だ。


とはいえ…もし武蔵境さんが全力なんて出した日には、真面目に災害レベルのことが起きるかもしれない。

自分のことは一切棚に上げず、軽いため息をついてコロシアムのあるフロアに向かって進んでいった。



さて…ダンジョン内で行われるタイトルマッチのルールをおさらいしておこう。

ダンジョン内に湧いて出るモンスターは障害物として各々排除することとなっているが、戦いの武器として利用してもよいとのことらしい…まあ出てくるモンスターのランクを考えると武器にはならないだろう。


勝敗の決め方は、身代わり石が破損した時点で勝敗を決する…とのことなんだが、なぜか手渡された身代わり石は5つあった。

武蔵境さんが前ランキング1位のカ・マセを本気も出さずに一撃で倒してしまった背景もあり、二人が本気でぶつかったら石の一つで衝撃を吸収しきれるかわからないからとのことだ。



ちなみに別のフロアにはSSSランク探索者が待機していて、勝敗が付いた後、両者が動けない場合は駆け付けられるようになっている。

同フロアにいないのは戦いに巻き込まれないようにするため…らしい。



コロシアムのフロアに到着すると、先客がコロシアムの中心で立っていた。

「ふむ…来たか」

「お手柔らかにお…」

「滾らせろよ?」

挨拶を遮り、獲物を見るような目を向けて死刑宣告をしてくる武蔵境さん。

ああ…こえー…。



『さーあ!皆さんお待ちかね。世界ランキング1位と2位のマッチングだ!

しかも二人とも日本人で…しかも長老の弟子と来たものだ!

やはり長老が育てたというだけあって、その実力は規格外!

武蔵境は前世界ランキング1位カ・マセを一撃で下し、会場を騒然とさせたのは記憶に新しいが…

かずやんは深淵層を踏破する偉業を成し遂げた!


本当は俺も実況として現場で観戦したかったが…


二人の戦いは何が起きるかわからないので、地上ではなくダンジョンで行われることになってしまった!


戦闘能力のない俺は…泣く泣くこうして地上から実況することになってしまった!


ダンジョンの場所は非公開としているが、場所がわかっても行くんじゃないぞ!

ダンジョン内は自己責任の世界だからな!


あー…それに入口にはSSSランク探索者が待ち構えているし、無理に通ろうとしたら粛清されるからな!』


実況もリモートだし、レフェリーもリモートで行われるという。


ライオンとハムスターの戦いとはこういうことを言うのだろうか?

なんというか…圧がすごい。

気分転換にコメントを見てみると…。


<おいおい…こうしてみると…>

<ラスボス感あるな…>

<日本を代表する二人の探索者が世界ランキングのしかもトップとして争うとか胸アツ>

<武蔵境さんの威圧感パネェ…>

<かずやん腰引けてるやん>

<そりゃ…長老の一番弟子ですし…>

<そういや二人とも武器を使うのかね?>

<どうだろう…(物理的に)ダンジョンブレイクが起きそうだなw>

<おいwブレイクというかブロウクンだろw>

<どっちでもええわw>


…そっトジだ。


『試合を開始します!!!………ファイッ!』


意識を目の前の相手に戻す。

格上も格上、多分今活躍している探索者の中でも異次元の存在。

様子見なんて生ぬるい。

隙を見せたら…その時点で終わる!


狂暴化バーサークLv1!」

<初手www>

<全力全開フルスロットルですやん>

<まじかwww>

<武蔵境さん=深淵層のモンスター並み>

<間違いではないな>

<Lv2にしないのはなんでだ…>

<相手の手の内わからないからじゃね?>

<それもそうか…>


「最初から全力でイキますよ!」

「ふむ…」

氣の刃を両手に出して、開幕と同時にしゃべりながら振り投げる。

目くらましを兼ねつつ距離を詰め…深淵層のモンスターも一撃で屠る短刀の必殺を放つ!


…見間違いか?

武蔵境さんの頬がニヤリと動いたような気が…。


「初手必殺…面白いが…」

言い終わる前に抜刀――


その勢いのまま振り上げると、二つの氣の刃が両断されて霧散する。

刃が無効化されるのは想定内だったが…

まさかその流れで蹴りを放ってくるとは思わず、短刀が懐に届く前に短刀を持つ手が蹴り上げられた。


「いってぇええー!」

短刀を持つ手は氣を纏っていたはずだが、そんなものお構いなしという一撃に短刀を手放しそうになる。

…が、ここで手放したら試合が終わる。


「…物足りない」

蹴った足が地に着くと同時、俺の懐が開いたところに流れるような動作で振り上げられた刀が振り下ろされる。



考えるより先に作れるだけ…氣の盾を三枚作り出し、振り下ろした刀を受け止める。

一枚、二枚…軽々盾を切り裂いていく、三枚が切り裂かれそうになる中、条件反射で出た拳が刀の腹を殴り飛ばし…軌道を逸らした。


勢いそのまま振り下ろされる刀――

遅れて破裂音が響きわたった。


―――――――――――

「★★★」「ブクマ」「コメント」いつもありがとうございます!


ああ…実は1ヵ月前にこの文章…結末まで書いてました。

ただ…投稿できなかったのは自分の実力不足で何度読み返しても投稿する気になれなかった。

ようやく酒が解禁、改めて禁酒の時に書いた文章を見なおすと圧倒的に勢いが足りない!?!?


酒に背を押された文章を後々見直すとそれはそれで、顔面赤面のような誤字脱字もあるかもですが…この一戦を楽しんでいただければと思います。

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