第114話 パぷニング

まぐろ祭りが盛況のうちに終わった翌日…珍しく熱を出した。


体調不良になるのも何時ぶりだろうか…

人は想像を超える出来事に遭遇すると、知恵熱を出してしまうようだ。


湧き水で強制リカバリしても良かったんだが、イベント翌日は全員仕事オフだし…

ここ最近働きすぎだから休めっていう身体からの合図だと思うことにした。


それにしても…この数ヶ月色々ありすぎた。

起こったことを振り返ると…。


・Eランク探索者の俺が気付いたらSSSランク

・長老に次ぐ深層踏破

・はじめのおじいちゃんがまさかの長老

・武蔵境さんとの圧倒的な力差

・絶許氏が…


うっ…頭が…。

見えない力が働くのか…これ以上は考えてはいけないようだ。


気分を変えようと、テレビをつけるとワイドショーっぽい番組が流れていた。


『SSSランク探索者かずやんが日比谷公園でまぐろ祭りを開催、3,000人を無料招待したみたいですね』

『えーっ!?3000人?多いのか少ないのかよくわからん人数やなー』

『クレイジーマグロと大間のマグロ料理を振舞ったみたいですよ?あの武蔵境氏も大間のマグロを100匹提供したとか』

『はーっ、えってことはかずやんはそんなに懐痛めてないってことかいなー?大間のマグロ100匹ってかずやんと比べて武蔵境さんはやっぱりすごいなー』

『いやいや…かずやんは世界最大1tレベルのクレイジーマグロを捕獲、提供してますからね?』

『そんなもん、SSSランクやったらいくらでも狩れるんちゃいますん?なーんか、よーわからんけど…かずやん?彼ってつい最近までEランクやったみたいですやん。急にSSSランクになったけど、本当に実力あるんですか?』

『長老に次いで初の深層踏破を成し遂げた探索者ですよ?流石にその一言は言っちゃ駄目ですよ』

『えー…でも胡散臭いわー。御輿に担がれてるだけとちゃいますん?』

『だーかーら、なんでかずやんのことそんな悪者っぽくいうんですか?』

『あなたもかずやんの肩持ちすぎちゃいます?なんか裏金でも貰ってるんとちゃいますん?』

『長老の弟子が先にSSSランクにならなかったから、って色々バイアス掛かっちゃってるんですかねー…』

『あぁ?お前ふざけるなよ!ちょっと表に出ろや!』


しばらくお待ちくださいの画面に変わり…一体俺は何を見せられていたんだろうと我に返ったので、テレビを切ろうと――


『えと…ただいま緊急のニュースが入りました!アメリカのSSSランク探索者アノトキノ・シュワットビネガー氏が日本に初来日しました!』

『長老以来に誕生したっていう日本のSSSランク探索者に会いに来た。ダンジョン後進国のSSSランク探索者の実力がどの程度のものか…楽しみだよ。ハッハッハ(英語)』

ムチムチの筋肉とニカッと作ったような笑顔をカメラに向ける。

漂白剤で白く染めたレベルの真っ白い歯が印象的だった。


しかし…SSSランクの探索者かー…。

ダンジョン先進国の探索者もSSSランクの武蔵境さんに興味深々なんだねー…。


緑茶を入れて、ズズーっと飲む。

このちょっとした渋さ癒されるなー。


『んー…この放送を見ているかもしれないな…シンデレラボーイ!おークッキングモンスターかずやん!SSSランクはそんな簡単になれるものじゃない、君の実力をみたいものだね(英語)』


…ブーッ!!!口に含んだ緑茶を吹きだした。


テレビに吹きかけてしまったので、ぞうきんを持ってきてテレビを吹いていると、スマホが震える。


『パイセン!!テレビ見たっすか?ネットニュースもヤバいっすよ!世界のシュワちゃんがパイセンに宣戦布告してきたっすねー!パイセンもYで宣戦布告するっすよー!』

聞きなれたキンキン声が頭に響く。

「はじめ…すまんが俺は今日熱が出て体調不良だ。それにシュワちゃんも日本に向けてそれとなくリップサービスで言っただけだろ…」

武蔵境さんの名前を出したら後に引けなくなるから、手頃な存在の俺の名前を出したんだろうなー…。

筋肉は確かについてるけど…うーん、なんというかでって感じがしたんだよねー。


『えっ?パイセン…熱出てるんっすか?前の会社で一度も体調不良を起こしたことのないパイセンが…雨あられが振るかもしれないっすね…』

「あー…すまんが今日は付き合ってやれないから、他に用事がなければ切るぞ?」

『わかったっす。また後でっす!―――ツーツー…』


一方的に電話をかけてきて、そして一方的に切られ呆然とする俺―――


…また後で?


どっと疲れが出たので、そのまま布団に倒れ込んだ。




…何かいい匂いがする。

「あっ!パイセン起きたっすか?来たら布団もかけずに、眠っててびっくりしたっすよ。体調はどうっすか?」

のぞき込むようにこっちを見る…はじめ。

「んー…あぁ大丈夫だ。すまない心配をかけた」

起き上がろうとする俺をはじめが手で制する。

「まーった無理しようとしてるっすねー。とりあえず寝てるっす。とりあえず軽く食べられそうなご飯を今準備してるっすから、それまで寝てるっす!」



軽く寝て少し楽になったところで、はじめの作ってくれた味噌風味の雑炊を食べた。

風邪というわけでもなく、ただただ気だるいだけだったこともあり、すこし味のある雑炊が身に染みた。

けだるさで意識できていなかったが、身体は空腹だったようで準備してくれた分を全部食べ切ってしまった。


「しっかし…パイセンも熱出すことがあるんっすねー…」

「はじめは熱出さなそうだな」

「それは…どういうことっすかね!?」

ぷんすか頬を膨らませるはじめ。


「いや…まあ来てくれて助かった。ありがとう」

はははと笑いながらも、面というのも恥ずかしいもので頬をポリポリかいて少し濁す。

「ふふーんっす!こんなかわいい後輩が看病に来てくれるなんて、パイセン感謝するっすよー!」

「ああ…本当だな」





……空気が沈黙する。




「ん?どうしたはじめ?」

「な、な、な、な、なんでもないっすよ!!そこは自分で言うなとか流すところじゃないんっすか!」

「んー…まあ、本人の主観っていうのも大切にしてやらないとな」

「ぶっころ…っす!」

とびかかってくるはじめ。

「ちょっ!…俺は病人だぞ!」

ガクッと体制を崩したところに、はじめが勢いのままに覆いかぶさる。


二人の顔の距離が近づき―――




――翌朝


「みんなおはよう……はじめも…おはよう」

「おはようっす…パイセン」

「……!?!??!?!?」

微妙な距離感の俺とはじめを見て…何かを察した国立さんの頭から生えたアホ毛っぽいのがピッキーンと伸びる。

「ほうほう…(ニマニマ)」

「くにやん…ちょっとこっちくるっす…!!」

何かを察したはじめは、ズルズルと国立さんを引きずっていった。


―――――――――――

「★★★」や「ブクマ」いつもありがとうございます!


…えっ?

作者の力量が足りない?

もっと熱くなれよ?


……今後の作者の成長にご期待ください

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