第81話 パイセン…実家にきてくれるっすか?

「パイセン!私の実家に来てくれないっすか!」


事務所について早々、はじめがとりあえず座るっすと、はじめの隣の席に座らせられてからのこれだ。


「きゃー!!キマシタワー!」

卒倒しそうな勢いで国立さんが叫ぶ。


「うるさいっすよ!」

どこからともなく取り出したピコピコハンマーでペコンッと国立さんの頭を叩いたはじめ。


「あいたっ!」

うーん…これはお約束なのか?

反応に困っている俺を見て、軽く咳払いしたはじめ。


「ごめんなさいっす。

どこで調べて知ったかわからないんっすけど、おじいちゃんが私の仕事を知ったらしいんっすよねー。

娘を任せるのに足りる男かこの目で確かめてやる!って言って聞かないんっすよ…。

放っておいたら事務所に乗り込みかねないので…ちょっと私の実家に来てくれないっすかね…」

最近深層を攻略したこともあって知名度も急上昇している。

サブチャンネルの登録者数も、メインチャンネルの影響からか登録者数は増え続けていて、顔出ししていたはじめの存在が知れ渡るのは必然だし、家族に知れ渡るのは時間の問題だっただろう。


「お…おぅ…こういうのはなんていうんだ?マゴコン?」

ただ、事務所に乗り込むはやりすぎじゃないかなー…。


「言いたいことはわかるっす…。ただ…マゴコンってなんっすかー!!」

微妙な表情を感じ取ったのかはじめもため息をつきつつも、ツッコミは忘れない。


「孫コンプレックス…あー孫は英語にしないといけないか?グランドチャイルドだからグラコンが正しいのかな?」

「ヤックで冬に出る商品名みたいっすねー…」

ウマイよねグラコロ、近所にヤックないけどグラコロが出たらつい遠出してでも食べに行っちゃうよ。


「で…なんっすけど…パイセン…実家にきてくれるっすか?」

話が逸れたのを戻しつつ…上目遣いはやめぃ!


まあ…はじめはうちの会社になくてはならない存在だ。

どういう理由であれ求められた以上は、筋は通しておいた方が良いだろう。


「ふぅ…わかった。いいよ。はじめはもううちの会社の大事な従業員なわけで、突然やめることになるのは俺としては困る。ダンジョン配信は不安定な仕事だし、話をして安心してもらえるかは心配ではあるが…。社長として一度きちんと挨拶したほうがよいかな?」


「あいさつ…(意味深)」

国立さん…聞こえてるよ!


「大事な人…」

従業員としてね!


この空気…誰かどうにかしてくれないかな!


「で?いつはじめの実家に挨拶に伺えばいいんだ?」

とりあえず、考えるのを止めて話を進めることにした。


「そうっすね…パイセンの予定が大丈夫なら、これから実家に来て欲しいんっすけど…どうっすか?」

「流石に…はやすぎだろ!?」


「あはは…そうっすよねー私もそう思うっすよー…じゃあ明日朝一でいいっすか?」

「りょーかい!明日どこに集合すればいい?」

「明日は…」

明日の集合場所を打合せして、本日の呼び出し事項は終わりとなった。



「あーそうそう、深層突破おめでとうっす!打ち上げするっすか?」

「打ち上げいいですね!高円寺さんめちゃくちゃすごかったです!企業案件もすごい来てますよ!」

「おう…企業案件の調整は国立さんに調整を任せるとして…今日は深層突破記念に仕事を切り上げて打ち上げしに行こうか!」

「「了解(っす)!!」」


ちょっと離れたところにある俺のおススメの居酒屋に連絡すると、予約が取れそうだったので予約した。

そしてタクシーを呼んで、全員でお店に向かうことにした。



居酒屋「あっさん」

店主阿佐ヶ谷さんが一人で切り盛りしているこじんまりとした居酒屋だ。

クマのような大柄な体格に、無精ひげ、一目見た時は怖いと感じさせるが…。


「おぅ…来たか。連れの方も…おっ初めましての方もいるな?阿佐ヶ谷大樹あさがやだいじゅだ。周りからはあっさんと呼ばれてる。さて…今日は店を閉めた。和也の祝いの日だって聞いてな。腕によりをかけて料理を振るまってやるからいくらでも注文してくれや!…金はとるけどな。はっはっは」

不器用に笑うおっさん。

とりあえずビールでいいか?っと聞いて、3つの大ジョッキに手際よくビールを注いでいく。


「今日のおススメは?」

「活きのいいジャックウルフを仕留めたからなー…いい塩梅に仕込みできてるのは山賊焼とかおススメだぞ?すぐ出せる系だとジャイアントオクトパスのお造りなんてどうだ?後はそうだな…ポテトサラダも個人的にはおススメだ」

居酒屋で頼むポテトサラダって旨いよね!

自分で作ろうとすると手間が掛かって仕方がないし、パウチ系も旨いは旨いが芋のホクホク感が薄れて…個人的には物足りなさを感じるんだよね…。


「じゃあ…あっさんのおススメ系を一通りお願いするよ。あとロック鳥の溶き卵があるんだが…これでだし巻きとか作れたりする?」顎に手を当て無精ひげをいじりながら少し考えるそぶりを見せるあっさん。

「おう、食材があるならそれを使って料理してもいいぞ?」

「あとは…はじめと国立さんの頼みたいものを頼んでくれ」


「了解っす!ってもあっさんの料理は何食べても旨いしハズレないっすから、おススメで十分っす!」

前の職場の時も何度か連れてきたことがあったはじめは、早々にお任せすることに決め込んでようだ。


「この…叩きキュウリの南高梅和えをお願いします!」

初めて来た国立さんは…チョイス渋いな!?まあ濃いのを食べるときってサッパリしたものがあると箸休めに丁度いいよね!

ちなみにこの店では南高梅和えといいつつも、自家製の白梅干しのほぐし身と白梅酢に浅く漬かったキュウリを和えていて他では食べられない一品に仕上がっている。


俺から持ち込み食材を受け取ったあっさんは「あいよ!ちょっと待ってな」と言って調理を始めた。


―――――――――――

かずやん以外の料理シーンの需要は少ないかな?

山賊焼きってなんであんなに旨いんですかねー…もっと手軽に食べたい


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