第79話 深層配信(12)

解体シーンはグルフィルターをオンにして、毛皮と各部位に解体する。

この純白の毛皮…売れるのかな?

手触りは良いけど…若干さっきの最後の雷撃タックルで所々チリチリになってるんだよね…。


フェンリルのサイズだが…世界最大の大きさを誇る犬のアイリッシュ・ウルフハンドより一回りほど大きい。

内臓をキレイに取り出して、肉を部位毎に分けた。

今までのモンスターと違って、フェンリルの肉は光り輝いている。

そして食べることで体内の氣が活性化してステータスが一気に跳ね上がった…ような気がするのだ。


過去に食べた時は、超ハッスルして数日間ダンジョンを潜り続けてモンスターを狩りまくったなー…。

おかげであの時から時間が経った今も探索者としてやっていけているまであるかもしれない。


<おいおい…フェンリルの肉光ってるんだが…>

<まじで食えるの?>

<いやでもかずやんの目がメッチャ輝いてるぞ>

<まじだw涎でてるw>

おっといけない。口元をぬぐう。


「いやーフェンリルの肉って食べるとめっちゃ氣が活性化するんですよー!昔食べた時はゲームでいうステータスが上がった感じがしたんですよねー」

<いやいや…ステータスアップの食材って…>

<そんなのあったらマジで大事件だぞ!?>

<本当だとしたら、探索者が皆のどから手が欲しい食材じゃん…>

<でもSSランクモンスターを相手しないといけないとか…一般探索者だと手がでないよ…>

<かずやんその肉全部食べるの?ギルドに卸したりしないのかな?>

<肉を巡って戦争が起きそうだなw>

<「ギルド公式」後程ダンジョンにお迎えに参りますので、帰らず待っていてください>

<ギルド公式キタ――(゚∀゚)――!!>

<これはヤバかったかw>

<神田さんちーっす!>

<うっはw>

<ギルドが動いたー!>

<海外のSSSランク探索者が頭一つ飛びぬけているっていうのは…こういう食材を食べたりしているからなのかも?>

<そうかも…かずやんが強いのも過去に食べたからってのもあるのか…>

<過去にあのフェンリルを食べてない状態で、討伐したことがあるって…>

<昔のかずやんは一体どうやって強くなったんだろう?>


神田さん…俺何かやっちゃいました?

「ははは、過去の話なんて面白くないですよ。まあ需要があればネタが無いときに話をしましょうかねー」

<需要しかないww>

<かずやんの強さの秘訣>

<金取れるレベルだってww>

<今日の配信も本来は有料配信でもおかしくないレベルだからな?>

<【50,000円】つ 深層の情報料>


赤スパありがとー!


「さて、今日は…フェンリルの肉とホットサンドメーカーを使って時短で美味しい調理をしていきますよ!

ダンタマを取り出して、薄くスライス、あとはスーパーで買ってきたカット小ネギを取り出したら野菜の準備は完了です。

次にフェンリルの肩ロースを少し厚めにスライスしたら片栗粉を薄くまぶします。

あとは合わせ調味料ですね。

酒とみりん、しょうゆにはちみつ、あとニンニクチューブを入れて混ぜておきましょう。

これで下準備完了です!」


ホットサンドメーカーに油を敷いて、ダンタマを軽く炒めていきます。

少し透明になったところに、厚めにスライスした肉を並べて蓋をして両面をひっくり返しながら焼きましょう。

ふたを閉めて焼くことで早く中まで火が通りますよ。

蓋を開けて両面に焼き色を付けたら、合わせ調味料を回しかけて肉に調味料をなじませていきます。

じっくりと…肉に照りが出てきたら火から取り出し、最後に小ネギを散らしたら完成です!



「できましたー!フェンリルの照り焼きです!」

生姜焼きにするか最後まで悩んだが、今日は甘辛い味を身体が求めている。

ハニービーのはちみつがいい感じの照りになり、ニンニクの香りが鼻孔をくすぐる。


「もう…我慢できません!照り焼きといえば…じゃん!金色のやつ!ということでいただきまーす!!」

ゴクッゴクッと金色の麦ジュースを一気に流し込んだ。

疲れ切った身体にシュワシュワの炭酸とアルコールが染みわたっていく…。


「くはぁああー!!さいっこー!!!」

<金色1ケース購入した>

<これはCM採用だろw>

<マジでうまそう>

<あぁ…ビール苦くて苦手だけど…これ見たらめっちゃ飲みたくなる>


「では喉を潤したところで…」

一切れを箸でつかみ、サクッと一噛み肉がかるーくかみ切れる。

もぐもぐと咀嚼すると、肉汁が口の中に溢れでて、はちみつと醤油の甘じょっぱさ、最後にニンニクの風味が口と鼻を駆け抜ける。

満足したところで改めて、蓋をパカッと開けた金色を流し込んだ。


「しあわせだー!」

天にも昇る心地だ。

本当は肉だけでも十分なんだが、一緒に味をしみ込ませたダンタマを食べる。

薄くスライスしてもシャクっとした食感に、煮込むことで辛味が甘みに変わって、肉汁とタレを吸いに吸った旨みの爆弾が口を爆撃する。

ぷはーっ!!

エメラルドキャベツを千切りにしておかなかったことを後悔したが、我慢できずマジックバックからエメラルドキャベツを取り出し湧き水をサッと掛けてかじりつく。


この濃厚な旨みをサッパリとしたキャベツが洗い流してくれる。

もう止まらない…。

多めにカットしていたフェンリルのスライスをホットサンドメーカーに入れて同じ手順で照り焼きを作った後、スライスチーズを入れて蓋をして軽く溶かす。

蓋を開けると意識が飛びそうな香り、そこに七味をぶっかける。

タレの旨味とチーズの濃厚さが相まって、旨みの相乗効果を生み出した後、ピリッとした刺激に酒が…酒がとまらないー!!


腹いっぱい食べて、気が済むままにビールを飲んで空腹を満たした。


パンッっと手を合わせた。

「いやー…最高でした。ごちそうさまでした。これで配信を終了したいと思います!」

<おつー!>

<マジ旨そう!!>

<ヤックで照り焼きバーガー買ってくる!>

<照り焼きとチーズの組み合わせ…マジパネェ!>

<七味もいいアクセントになるんだなー!>


コメントを見届けて、深層配信を終了した。



深層ポータルで地上に戻ると、宣言通り以前乗ったことのある車が止まっていた。

そしてギルドに連れていかれた俺は…夜遅くまで根掘り葉掘り神田さん&四ツ谷さんペアに詰められるのであった。


―――――――――――


深層編完結!


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