第74話 深層配信(7)
「おはようございまーす!朝7時ですね!朝早くですが、これから深層三層の探索を開始します!」
<おはー>
<おはようーー!>
<おっはー!>
<かずやんおっはー!>
<おはようございます!>
<ここが深層配信をしているチャンネルと聞いてきました!>
<ニュース見てきました!>
<【8,989円】今日の配信も期待してまーす!>
ニュース?なんのこっちゃ。
深層三層に到着した俺を待ち受けるのは、木々が生い茂る森だ。
木を行き来する厄介なモンスターがいたり、ラビリンストレントのように木に擬態化したモンスターがいたるところにいるので注意しながら進まないといけない。
ラビリンストレントは攻撃力はないが、花粉により平衡感覚を狂わせ・認知能力の低下させる。
木々の連携による現在値がわからなくなり遭難させてくる。
精神的にも身体的にも弱ったところで森に住むモンスターをその場に誘導させて戦闘を強制させてくる。
最終的に負けたほうを木々の養分にするというやっかいなモンスターだ。
さて…正攻法で攻略するならこの森というかモンスターを攻略しないといけないが…ラビリンストレントを真向から攻略するのは手間が掛かって仕方がないし…ヘタに花粉を吸いこめば、フロアボスまで結構響いてくる。
「とりあえず…ラビリンストレントが厄介なので…全力でショートカットします!」
両手に氣の刃を作り出して、広域的にぶん投げる。
ザクッザクッと目の前を埋め尽くしていた木々が伐採されていく。
<やると思ったww>
<ショートカット<物理>>
<邪魔なので切ります(キリッ>
<氣って何でもできるのね…>
<あそこまで破壊力のある氣はかずやんにしか使えないって…>
辺り一帯の木がなくなれば、あとはモンスターを相手するだけでいい。
するだけって言ったけど…深層だからそのモンスターが強すぎるから、ようやくスタート地点に立ったと言えるんだけどね。
森に縄張りとするモンスター…その森を一瞬のうちに失い唖然としているウェアウルフが俺を出迎える。
「ぐぉお?」
「ぐぉ?」
目配せして今起こったことが理解できないといった様子だ。
なんというか…テンパっているようだ。すまん。
「ぐぉおおおーー!!!!」
そんな有象無象を叱咤激励するように、叫ぶウェアウルフ…あれがこの森の長だったのかもしれない。
視線が合う。
ウェアウルフの長…ボスウルフが手下に合図を送ると、手下が一斉にこちらに向かって迫ってくる。
距離を詰められたくなかった俺は、近くにある切り落とした木に氣を纏わせてぶん回す。
一部のウェアウルフは振り回した木に巻き込まれるように吹き飛ばされたが、巻き込まれたウルフを足蹴に俺との距離を詰め、ギラりと鈍い輝きを放つ爪の斬撃が飛ぶ。
拳に纏った氣で斬撃をはじくが衝撃で手が軽くしびれる。
はじいた斬撃が轟音と共に背後の地面を大きくえぐった。
俺の氣の刃に近しい一撃。
威力もさることながら群れで行動し、連携した連続攻撃を得意とするウェアウルフ。
森の中だと、足のばねを活かして木々を転々とする機動力までついてくるので手に負えない。
じゃあどうするか?
森は伐採したので相手の土俵は崩したが、それでも連携攻撃は止む気配がない。
その一撃の破壊力は言うまでもない。
ただ、ここまでの連携は後ろにいるボスウルフの指示があってのことだ。
「クロスカッター!」
腕に氣を纏いクロスの刃をボスウルフに向かって放つ。
にやりと笑みを浮かべたボスウルフは、腕を振るい自慢の爪で氣の刃に向かって弾き飛ばした。
クロスカッターを放った瞬間を周りのウェアウルフが見逃すはずがない。
二匹のウェアウルフによる爪の斬撃がこちらに向かって飛んでくる。
片方の氣をまとった拳ではじくも、もう片方は間に合わず斬撃が腕を掠めた。
「いってぇ!」
ゲラゲラと笑うボスウルフ、取り巻きのウェアウルフもボスにつられて笑う。
どうやら俺の攻撃を弾きつつ一撃を入れたことで、こちらを格下と判断したようだ。
<かずやん大丈夫か!?>
<かずやん怪我したの初めて見た!>
<ウェアウルフって強いのか>
<どう見ても強いだろ…>
<かずやんの攻撃が全く聞いてない;;>
<【1,000円】かずやん逃げて!>
<これは撤退か!?>
<三層突入だけでも十分だからかずやん撤退したほうがいいって!>
「食材になると思ったから…加減してたのに…流石にイラっとしたんで食べるの諦めます」
<はっ??>
<いやいや…今はそういう話じゃないでしょ>
<加減???>
<ここ深層だよね?>
<嘘松wwww>
<かずやん顔赤いぞww>
<ここからどうするってんだwww>
形勢不利に見える中、自然と出た言葉に一部のアンチ視聴者がバッシングしてくるのを右から左に聞き流し改めてウェアウルフの群れを見る。
ボスウルフを筆頭に、手下が4匹の計5匹、手下は2匹ペアで行動させているようだ。
マジックバックから中層の湧き水を取り出し、傷口に振り掛け止血し叫ぶ!
「
全身が燃えるように熱くなる。血流が速くなり鼓動が急激に鐘を打つ。
ダンッ!!
地面を蹴った。
初速から最大加速へと一瞬で切り替わる。
反応が遅れたウェアウルフに対して距離を詰め、スピードを緩めることなく顔面を掴むと有無を言わさずもう一匹のペアのウェアウルフを巻き込むように地面に叩き付けた。
2体のウェアウルフの顔面が地面にめり込み、ピクリとも動かなくなる。
動かないウェアウルフからコアを引き抜き
ボスウルフがウゥウウ…と獣特有の低い唸り声をあげる。
いまさら警戒しても…もう遅い。
さらに2体のウェアウルフが先ほど同様、爪の斬撃を連係プレーで飛ばしてくる。
「それ…さっきみたよ?芸がないな…」
氣の刃を両手に作り振り回す。
触れた爪の斬撃をすべて弾き飛ばすも勢いはとまらない。
勢いはそのままに、ウェアウルフに突っ込みスパスパっとみじん切りにしてやった。
「あとは、ボスウルフ…お前だけだな?」
じりっと一歩下がるボスウルフ。
先ほど浮かべていた余裕の表情はそこにはなようだ。
「グァアアアアアー!!!」
己を奮い立たせるような咆哮と共に、一気に距離を詰めてくる。
一瞬のうちに俺の懐に入ったボスウルフは爪を牙に見立て、必殺の一撃を放とうとする。
自ら俺の懐に入ることで低い体勢になったウェアウルフ。
本来は超高速で懐に入り、その勢いのまま相手ができないままに一撃を放っていたのかもしれないが…。
それさっき似たようなことやったやん…とボスウルフの動きが手に取るようにわかる今――
「脳天がら空きだって!」
ズドンッ!
ボスウルフの脳天に肘を叩き落とす。
ウェアウルフの顔が歪み目がグルんと回る。
必殺の一撃を放とうとした手がだらんと力なく落ち、そのまま前のめりに崩れ落ちた。
「うーん…あれですね!さすがSランク耐久値が高くて壊しきれなかったみたいです!」
ブシューー!!!
全身の熱が気化し一気に放出される。
<
<Lv1でこれって…Lv2とかどんな感じだよ…>
<マジかよ…一瞬で盤上ひっくり返した…>
<これはマジで深層踏破が見えてきたかも!>
<【5,000円】かずやん最強!かずやん最強!かずやん最強!>
<かずやん最強!かずやん最強!>
<アンチ息してないwww>
<【20,000円】「姫っちゃん」師匠…しびれました!>
<姫降臨!>
<姫っちゃんキタ――(゚∀゚)――!!>
<姫っちゃんキタ――(゚∀゚)――!!>
<姫っちゃんキタ――(゚∀゚)――!!>
「ははは…しびれたって、まだ深層3層なので、気を緩めずこのままいきますよー!」
<【666円】絶・許!>
<とりあえず噛みつくスタイル好き>
<安定の絶許スタイル>
だからなんでだよ!っていうか絶許さん…ファンできてないか?
―――――――――――
食材を意識しなければ倒せるんです(キリッ!
「★★★」や「ブクマ」いつもありがとうございます!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます