第12話 初めてのスパチャ

配信が終わって帰宅した俺は、ストロングチューハイをグイっと流し込んだ。

「体がなまってしょうがない」

今日のダンジョン配信を振り返る。

思考とモーションのズレからモンスターハウス攻略は完璧と言えない仕上がりだった。

ブーメランとして投げた以上、投げたら戻ってくるはず…。

昔はできた芸当ができなくなったもどかしさ。


2手を4手要した時点で視聴者は、雑魚相手に面白みに欠けたと感じたことだろう。

姫っちゃんも参加してくれて、よいしょしてくれたから落胆されずに済んだものの、受けはイマイチだったはずだ。


次の配信では、この体たらくを脱した配信をしなければ視聴者は離れてしまうだろうかもしれない。

「とりあえず…職場まで走るか」

電車で30分ぐらい先にある職場、全力で走ったら時間はそう変わらないが社会人になって電車を使うのが普通と思ってしまっていた。

それがいけない。

配信者は身体が資本、弛んだ身体ではいつか怪我をしてしまう。



反省会はこれぐらいにして、初配信のスパチャを確認した。

「えと…いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅう…まん!?!?」

483,283円

目を疑う数字、手取りで3か月分ぐらいの金額を1日で稼いでしまった。

たまたまバズったので継続性はないかもしれない。


だがしかし、これだけあれば配信者としてやっていけるかもしれない。


MouTubeの収益は雑所得だから総合課税で考えないといけないはずだ…。


経費のことも考えると兼業を続ける場合は色々考えないと大変そうだ。

色々頭をよぎるが…税金のことは亮に任せることにしよう。

良い友人を持ったな!ということで問題を先送りすることにした。


MouTubeのメッセージを確認すると何件か連絡が来ていた。

お金がなくて助けてくださいや、パーティーに参加してくれませんか?などなど

読み飛ばしていると、姫っちゃんからメッセージが届いていた。

「助けていただいたお礼に、お食事でもどうでしょうか?お仕事忙しいと思いますがご都合が良ければご連絡ください」

まじか!?ご飯のお誘いは絶対参加だろ!連勤?んなものは仕事を3倍速で終わらせたら時間ができるはずだ。

姫っちゃんに是非ともと返信しつつ、俺の休みは酒とともに去っていくのであった。



ーーギルドーー


「和也のダンジョン探索記を見てという問い合わせが多数寄せられているのですが…」

「動画を見てって、変わった問い合わせだな。」

サポートセンターでは、問い合わせをしてきた人に、適切で早急な対応を求められることもあり昼夜作業に追われていた。


大体は探索者の横暴な態度についてや、問題行動の責任について取るようにといった胃を痛めるような内容が大半だったが、今日の問い合わせは普段と異なる内容だった。

<Eランク探索者の配信内容が、どう見てもEランクが取り上げられる内容じゃない。>

<過去ギルドに詰められて、ギルドに行くのが怖くなってEランク探索者からランクアップできない探索者がいる。>

<EランクがCランクモンスターを圧倒して、素材を得るも売れないから配信で投げ捨ててた。中層以降の素材はギルドでも需要があるのではないか?>

最初は冗談だと職員は思ったが、問い合わせ総数100件を軽く超え、その9割越えが高円寺和也という探索者についてのものだった。

サポセンでは対処しきれず、エスカレすることになった。


数日後ギルドは異例の対応に出るのであった。



―――――――――――

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