第4話 からあげ棒

「んー、武器になりそうなもの…あっ」

コンビニ袋から、先ほど食べたからあげ棒の棒を取り出した。

「何もないよりはマシか。相手はあれだしこれで十分かな?まあ…来いよデカブツ相手をしてやる」

からあげ棒をサイクロプスに向け、軽く挑発してやった。

馬鹿にされていることを理解したのか目を赤く充血させて歯ぎしりするサイクロプスはウォーハンマーを振りかざした。


<いやいや、棒が武器とか草>

<イレギュラーって絶対わかってないだろ>

<グロフィルターオンにした>

<サイクロプスくそはえー!>

<姫っちゃん…はダメだ唖然として動けてない>

<今のうちに逃げて!姫っちゃん>


ズドンッ!!!!

サイドステップで横に避けると元いたところにハンマーが突き刺さる。

どうやらこのサイクロプス、普通のサイクロプスより少し早く動けるようだ。

とはいえだけだ。

やはりDランクモンスターは動きがトロいのでこれぐらいの攻撃は簡単に避けられる。


ウォーハンマーを地面から引っこ抜いたサイクロプスは額に青筋を浮かべピクピクさせている。

避けられることを想定していなかったようで、勝手に逆上しているようだ。


「ウガアアアアア!!!」

視線だけで人を殺さんとするサイクロプスはウォーハンマーを乱雑に振り回しこちらに向かって走りだしてくる。


俺は手に持った棒に氣を込めた。


サイクロプスの弱点は見てわかるように巨大な目だ。

すべての神経が目に集中していることもあって、目さえ破壊してしまえば簡単に倒せてしまう。


乱雑に振り回すウォーハンマーの動線を見極めて最小の動きで避け続け、サイクロプスの懐に向かって歩みを進めていく。

ただそれも、先端のハンマー部分さえ過ぎてしまえば、木の棒部分はさほど脅威ではない。

ここまでくれば、手に持ったからあげ棒で木の棒をはじいて前進すればいい――


そして俺はサイクロプスの目の前に立つ。


グサッ!!!ボンッ!!!

懐に入った俺はその場で大きくジャンプ、サイクロプスの目を目掛けからあげ棒を突き刺す。

そしてため込んだ氣を爆散させた。

電子レンジで生卵をレンチンした末路のように目玉がダンジョン内ではじけ飛んだ。


「ギャアアアアア!!!」

断末魔をあげ倒れたサイクロプスは膝をつき…糸が切れたようにその場で動かなくなった。

しばらくしてからダンジョンに吸い込まれていった。


「あの…大丈夫ですか?」

サイクロプスを倒して、周りにモンスターがいないことを確認してから、鳩が豆鉄砲を食くらったような顔をして呆然としている彼女に声を掛けた。


「…えっ、あれ、あの…はい。助けてもらってありがとうございます!」

彼女の中で時が動き出したのか、それだけ口にした。


―――――――――――

読んでくださりありがとうございます。


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