かずやんの探索記~やっぱり飯が好き~
morio
第1話 酔っ払いはダンジョンへ
「た…たすけて!!だれか…誰か助けて!」
女性の声がダンジョン内を木霊する。
しまったと思ったときには退路は断たれ、モンスターが来た道をふさぐ。
絶体絶命の状況、そんなときモンスターの奥から人影が現れた。
助かった…と思ったのもつかの間…
男はコンビニ袋を片手にスーツ姿、どう見ても仕事帰り。
「なんで…こんなところに一般人が…私のことはいいから逃げなさい!」
女性は叫び疲れた喉に喝を入れ叫ぶ。
「えーと…このデカブツ倒しちゃっていいの?獲物横取りで訴えたりしない?」
男の第一声に時が止まった。
~話は少し前に遡る~
「なんでこんなに働かないといけないんだろうか…」
月半ばで残業時間が100時間を超え、明日は15連勤ぶりのほんと久々の休暇だ。
ダンジョン配信者としても探索者としてもうまくいかず、学もない中ようやく就職できた会社。
これで俺も普通のサラリーマンとしてやっていけると思ったんだが、残念ながら入ったところはまっくろくろのすけでした。
時刻は深夜2時を回ったところ、田舎で過疎っている駅周辺には24時間やってるような居酒屋なんてリッチなものは存在せず…
せっかくの休日前、家に帰ってガッツリ飲もうと帰宅途中に唯一やってるコンビニで晩酌セットを買うことにした。
コンビニに入った俺は、迷うことなく酒コーナーに足を運ぶと、ストロングチューハイ500mlを6本、飲んで食べてると気付いたら寝てしまうので、酒の肴はいつも乾き物にしてる。
適当に数点をカゴに突っ込みとそそくさとレジへ向かった。
支払うタイミングでホットケースのからあげ棒が目に入り、ついで買いして店を出る。
行儀は悪いが、今日昼飯を食う時間もなかったのでお腹と背中が引っ付きそう。
店を出て紙袋からからあげ棒を取り出し、棒から一つ噛みちぎる。
深夜のホットフードは廃棄寸前だったのか、ジューシーどころかジャーキー
チューハイもからあげも悲しいかなストロングスタイルだ。
「ぷはー!この世は不条理だー」
ストロングチューハイを一気に飲み干した。
からあげ棒を食べたとはいえ、帰り道すきっ腹に駆け付け3本のストロングチューハイを流し込んだ俺の顔色は茹でダコを通り越して、若干青ざめていた。
久々のアルコールは勢いよく回る回る。
歩くたびに胃の中でシェイクされ気持ちが悪い。
とはいえ、あとは家に帰って寝るだけだ。
俺一人が街灯に照らされ歩く田舎道、俺の意識は朦朧、ふらふらの千鳥足。
帰路に着こうとしていた足取りは――
家の方向とは少しそれ、そのままふらふらと無意識のうちにダンジョンに吸い寄せられていった。
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