最強のアプローチ
「――
「…………」
「何度も何度も、告白してごめんなさいっ! 毎回、断られているのはちゃんと気づいてる……、分かってるの。……諦めが悪いって思っているでしょう? でも、それだけ好きなの――好きで大好きで超好きでっ、この気持ちが溢れて止まらないの! 自己満足に、筧くんを利用しているって言われても仕方ない……非難されてもおかしくないことをしてる自覚はあるけど……、それでも私は筧くんのことが好きなの!! ……お願い、付き合って。絶対に、筧くんに損はさせないッ、絶対に幸せにするって、約束するから――」
「……気持ちは、分かったよ。一回目の時からふざけて言っているわけじゃないってのは俺も理解してる……、本気の告白に、だから本気で答えたんだ……『ごめん』ってさ。それを受け入れたくないって気持ちは、まあ分かるよ……だから二度、三度、告白を繰り返す気持ちも分かる。何度も告白すれば、俺の気持ちを変えることができるかもしれないって期待もあるんだろう? 気が変わる、かもしれない……、俺も、それを否定したりはしないけどさ――さすがに百回以上もする告白は嫌われると思うぞ?」
当事者でなくとも。
部外者としてそれを聞かされたら、関係ないのに嫌いになってしまいそうだ。
「え、ちゃんと数えててくれたの……?」
「スマホでね。告白されたら記録していただけ……頭で記憶していたわけじゃないよ」
「それでも嬉しい……っ。筧くんの中で、私の存在が少しでも、大きくなっていたなんて……っっ」
「まあ、大きいかな……少なくとも、見て見ぬフリができる相手じゃないのは確かだ……」
「ほ、ほんとに……? じゃ、じゃあ――気が変わったりした……? ――好きです筧くんっ、私と付き合ってくださいお願いしますっっ!!」
「……本気で俺と付き合う気があるのか? ――あるなら、その手を離せ! なに俺の妹を人質に取ってっ、ナイフを首に突きつけながら俺に告白してんだお前はッ!!」
まだ小さな妹は、状況がよく分かっていないようで、怖がってはいない……それは良かった……と言えるか……?
「……だって、大好きだから……、手段を選んではいられないもん……!」
「選べ。あと、この状況でぶりっ子されても可愛いとはならない……っ。俺は怖いよ……お前の行動力が……!」
「えへへ……」
「褒めてねえよ」
「とにかく! 付き合うの、付き合わないの!? 付き合わないなら――もう知らないからっっ!!」
「待て待て待て!! 自暴自棄になるなッ、お前は妹の命を握ってるってことを忘れるなよ!?!?」
「……にいさま」
「あ、ごめんな、
「え、じゃあ付き合ってくれるの……?」
「…………妹が助かる選択肢って、それしかねえの……?」
「にいさま、付き合っちゃダメ」
「で、でもさ……」
「妹ちゃん? 余計なことを言わないの……、綺麗なお肌に傷がついちゃうよ?」
「これ、告白シーンなんだよな……?」
切迫シーンにしか思えない……。
「しゅだんをえらばず、にいさまを手に入れようとするそのこうどうりょくは、こうひょうかです」
「そ、そう?」
「ですが、あまい」
妹が、向けられている刃に指を当て、ぐっと押すと――刃が引っ込んだ……、え?
「おもちゃでにいさまをごまかせても、あたしはむりです……だってちかいですから」
「い、妹ちゃーん……?」
「ほんきどがたりません。ほんもののきょうきで出直してきてください……みらいのおねえちゃん――あたし、きたいしていますから」
……あれ? 意外と妹は、彼女のことを認めている……?
「かわいいので、ありです」
「顔だけで見るなよ……」
内包している狂気は、クラス一、どころか学校一だろう。
これを受け入れる自信は、俺にはねえ。
「にいさま、おにあいですよ」
「……どこが」
「もしかしてきづいていない? だって、にたものどうしで……それともどうぞくけんおとか?」
同族嫌悪……?
は? 俺が?
「じかくなし……じかくがあるぶん、おねえちゃんの方がまだマシなのかも……ですね」
ナチュラルにお姉ちゃんと呼ぶな……まだ付き合うわけじゃない。
というか妹の中ではもう既に結婚までいっているじゃないか……、早過ぎる。
「筧くん」
「……なに?」
「付き合っちゃお」
「嫌だ」
「あらら……じゃあ今度こそ、妹ちゃんが期待する凶器で攻めてみるね」
「はい。きたいしています――おねえちゃんのきょうきを」
仲良くなった妹とクラスメイトを見ていると……膨らんでいく狂気に足がすくむ。
これからなにが待っているのか……想像もしたくなかった。
「待っててね……筧くん?」
…了
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます