新作・小片小説「リハー猿」



「飼い主はまだなのか? ……どうして『この子』たちだけが先に到着してんだよ……」


「車で移動していたんですけど、道の混み具合の差ですね……まあ、先に来てしまったものは仕方ないですし、この子たちだけで、立ち位置だけでも確認しておきますか?」


「そうだな……それくらい、飼い主がいなくともできるだろう――餌はあるか? 餌さえ渡しておけば、俺たちの指示にもなんとなくで従ってはくれるだろう」


「では――呼び込みますね」




「キーッ、キキーッ!!」


「あっ、ダメ――勝手に移動しないで――、あぁ!! そっちは精密機械がたくさんあるから……っ、あーもう止まらない!! バナナを渡しただけじゃ全然言うことを聞いてくれませんよっ、どうすればいいんですか!!」


「……やっぱり飼い主がいないとダメか……。賢いからこそ、従うよりも現場を混乱させることでバナナのおかわりを貰おうと企んでいるのかもしれないな――賢い猿たちだ、まったく」


「これじゃあリハーサルができませんよ!!」


「想定はしていたが……やはり猿だけじゃ無理な話だったか……」



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