2回 立花翔、結果的に人気配信者を助ける 

消えゆくミノタウロス(仮)を見ながら思うこと、それは

 


頼む!何かドロップしてくれ!!


その一言だ

というのもこの男、今日はとてつもなくついてないのかドロップなしなのだ


冒険者はランク制度がありS~Gのランクがある

翔はミノタウロスをワンパンで沈めても、とある理由によりランクはFランク

会社で例えるなら試用期間が終わって正社員になれたくらいだ


そんなFランクで燻り続いている男がミノタウロスをワンパンで倒したと言って信じてもらえずドロップ品を売買しようとしても盗品を疑われた

そんな中でミノタウロスのドロップ品を狙うのは食費を浮かすため

限界社会人の節約術は命がけなのだ!


そんな願いを嘲笑うかのようにドロップしたのは立派な牛角

西部劇に出てきそうな雰囲気を醸し出すいいインテリアだが、食いものではない

ハズレである

例えそれが激レアで女性が驚いていても食えなければ意味がない


「あ、あの・・・」

「これもハズレかよ!!腹減ってるから早く飯食わないとカタボってしまう!!」

「大丈夫ですか?」

「ん?あぁ僕の魔法はちょっと特殊でしてね。空腹状態が続くとまずいんですよね」


翔にとってカタボリックは最重要案件

本当ならさっさとお肉を一狩りしたいのだ


「えっと、ならお礼がしたいのですが」

「あー、いえそれには及びません。困っている人を助けるのは当たり前のことですので、それよりもそこに転がってる角いらないので差し上げますよ」

「え!?カイザータウロスの角をですか!?本気ですか!?」

「Fランクの僕が持ってても盗品を疑われて資格をはく奪されかねないので」

「Fランク!?ここ下層ですよ!?」


ダンジョンには大きく分けて上層、中層、下層とありその下の深層もあるのだがそこに行くには最低でもSランクにならなければならない

そしてSランクだとしても簡単に死んでしまうので、深層で活躍できるには人間をやめなければならないと言われている

ちなみにFランクの推奨は上層である


「じゃあ気を付けて帰ってくださいね」ドンッ

「ちょっと、って早っ」


物凄い勢いでと走り去る翔

ピンチになれば颯爽と現れ敵をワンパン、見返りを求めず去っていく

圧倒的なヒーロームーブなのだが、当の本人は


《に~く肉肉肉肉肉肉う!!!!》


今日の晩飯に必死なのである

そして必死すぎるあまり女性の近くにダンジョンカメラが浮いていることに気づかぬほどに


















私はBランクの冒険者、そして


「みなさんどうもこんにちは、カナンで~す☆」


本名はカナなんだけどカナンと登録している


『カナンちゃんキチャ!!』

『今日もカワイイ!』

『今日もちっちゃいね。ハアハア(*´Д`)』

『↑通報しました』


自分で言うのもなんだが、人気配信者でもある


「まだ成長期がきてないだけで、来たら一気にナイスボディなお姉さんになれるからね!」


『それはない』

『それはない』

『それはない』

『むしろ縮んで』


「ちょっとみんなひどいよ!」


小学生から身長が変わらずお子様ボディが悩みの種

でもまだ16歳、まだまだ伸びるよね


「この前エクスターに投稿した通りBランクになったから初めての下層に行きたいと思います!」


『ついにか!』

『カナンちゃんめっちゃ頑張ってたもんね、おじさん奮発しちゃうよ! +10000』

『前祝いや!! +5000』


「あ!ありがとうございます!みんなの期待に応えないとね!」


中層から下層への階段

一歩一歩降りるごとに、ピリッと張り詰めた空気を感じる

いよいよ冒険者としても上級者になろうとしている


「とーちゃーく!ここが下層かー。まっ洞窟だから景色は変わらないんだけどね。それじゃあ初の下層、探索開始☆」


そして、初めて会ったモンスターはミノタウロスだと思ったらまさかの上位種カイザータウロス

視聴者の中に有識者がいて攻撃せずに隠れてやりすごそうするが流石上位種すぐに見つかり追い詰められてしまう


「きゃーーーーーーー!!!!」


『おい誰か助けに来てくれよ!!』

『近くに誰かいないのか!』

『そういえば、今日は他のダンジョンでレア個体の大量発生が報告されてたからみんなそっちに行ってると思われる』

『カナンちゃん早く逃げて!』


滝のように流れるコメント

カナンも逃げたいのだが目の前のカイザータウロスが上手く逃げ場を無くし、強引に逃げようと魔法で攻撃してもダメージが少なくむしろ怒らせてしまい手が付けられなくなってしまった

そして、カイザータウロスの大斧が振り上げられカナンの命運もこれまでかと思われたが


「オオオオラアアアア!!」

「ブモッ!?」

「え?」


『『『『は?』』』』


いきなりカイザータウロスの巨体が横に吹き飛んでいった

そこからは一方的だった

不意打ちを狙い斧で背中を切りつけようとも大斧だ壊れ、すさまじい音とともに放たれたパンチにカイザータウロスは消えていった

そして、中々でないカイザータウロスの牛角を押し付け去っていく

まさに映画のヒーローみたいな存在

そして自分がそのヒロインになったかのようだった

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