経過観察

 「それで、その人の見た目はどうだった?」


 保健室の人はそう聞くから、私はその人に口答えをしない。或いはして欲しいならばそうするが……


 「ええ、典型的な学生で、私に目もくれませんでした。」




 所謂、所謂ところの所謂は、書き割りというのでもやっぱりおかしかった。


 今朝見た通りの風景に辿り着いたならば、ただ今の以上の面白味は何も無いと言われてしまったただ今である。私も身分として曖昧で、書き割りで無いというのはどうやら本当らしかった。


 よって生身の小道具として言わねばならない。


 「先生、私はこの後何をすればいいですか。」


 すると、


 「教室に戻って、転校生がやって来るから、声を掛けてみなさい。そうすれば多分、何か有るかも知れません……けど。」


 やっぱり。




 教室のドアは準備していなかった分、少しの音も立てずに開いた。その軽さと軽薄さの混同によって、今入るところの空間が意味も無く疑わしいものとなっていたのは、結局私の胸の内には過ぎないが、既にこうして気が付かぬ間に隣に座っていた人物が、はたして私であるのか、私ではないところのもう一人であるのか、どちらであっても同じのはずは無かった。

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