第4話 命令

バタフライが亡くなってから半年程経った

頃だった。

キラービーはイーダから命令を受ける。


「光の教団の教主を始末しろ。」


『光の教団か……』


キラービーは結局自分に回ってきたかと思った。


「光の教団に関する資料を渡す。よく読み込み

理解した後、入念に探り、計画し実行しろ。

計画の見通しが立ったらまず私に報告するのだ。」


それからイーダは力を込めて付け加えた。


「この相手は我々が何度も失敗している

とても厄介な相手だ。

用心してかかるのだぞ。」


「………了解です。」


イーダはこの件をキラービーに任せたくなかった。

キラービーの失敗は即ち己の組織の失敗となる。

他の者は使い潰せても、彼女を簡単に使い潰す

わけにはいかなかったのだ。


暗殺部隊のトップ層が『死神』と呼ばれ出したのは

ここ十数年のことだった。

暗示的に揶揄するように使われ出したその言葉は

やがて対象になるかもしれない相手を

恐怖させる言葉として定着していき、それを

イーダは大変喜び自分から進んで使うように

なっていった。


その名があるだけで、いや存在するだけで

皆が恐れ畏怖し、逆らわずに従うようになる。

それは途轍もない優越と快感であった。


だがそのイーダの脛を蹴る存在、

『光の教団』がここのところ日増しに

力を増しているという情報が彼を苛立たせた。

特に総統本人からの

「何とかできないのか。」

という要請には、面を上げることが出来ず

忌々しさと苛々が彼を包み込むのであった。


『必ず潰してしまわなくてはならない……!』


その強い思いと決意で己の中の一番手を

使うことに決めた。


彼の部下の中にはキラービーを使うことに

反対する者もいた。

「適正があるか分からない。」

が大きな理由であったが、こればかりは

有るか無いか、試してみないことには分からない

ことであった。


実際今までに適正がある者が存在しなかったので

試せるものは試していくしかない。


「キラービーが失敗すれば、殲滅作戦で

いくしかない。」


それはイーダの持っている工作部隊の全軍を

使って徹底的にその場にいる個人、又は集団を

殲滅することとなるのだが、

それは今まで反政府活動の集団やクーデター未遂

など戦力のある者達に対してのみ使ってきた

手段であり、今回のような無抵抗な集団に対して

それを行使するのはやや“恥”と思われてしまう

恐れがあった。


総統はそれを嫌がった。

無抵抗な集団を軍や精鋭部隊を使って鎮圧して

しまうと、穏健な国民達からより強い反発を

生むのではないかと。


そして何よりイーダの脛の傷を広げる事情が


「光の教団の教主とその周辺は諜報機関の

裏切り者である。」


という事実であった。

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