無自覚ドジの転生者 〜気づいたら勝手にパーティーを組まされた俺。そのまま魔王討伐へ〜
るあん
第一章 ドジっ娘はこの世界について学ぶ
第1話 ドジっ娘、転生される
「おい、ロイス! 起きろよ! おーい。冒険者ランキング2位止まり!」
「お前、その呼び方はやめろって言っただろ!」
「わりぃ! でも今日は依頼受けに行こうって言っただろ」
「もうちょい待てよ」
俺は友人のオリオに起こされてようやく目を覚ました。
オリオは良いやつだが起きないとここギーデイル王国の冒険者ランキング2位という俺の思い出したくはないワードを出してくるから悪いやつということにしている。
「おーい。まだか」
「そんなに早くは準備出来るわけ無いだろ。さき行ってろ」
「ギルドに早く来いよ」
とりあえず俺は一通りの準備をして一階に降りる。
「もうオリオくん、行っちゃったわよ?」
「先に行かせたんだよ」
「待たせちゃだめよ。ほらこれ持っていきなさい」
「ありがとう」
俺は母さんから袋に包まれた何かを渡された。
恐らく弁当だろう。母さんはいつも俺が依頼を受けにいく時にはこうしていつも弁当を持たせてくれる。良い母であるが.....。
「あれ? ロイスちゃん! 行ってきますのハグは!?」
「母さん、俺はもう子供じゃないんだよ」
そう。これである。母さんは異常に俺を好いてくれているのだ。好いてくれるのは普通に嬉しいのだが俺の年齢にあっていない愛情表現をしてくるから困っている。
「お母さんからしたらまだまだ子供よ〜! そうよね、貴方」
「そうだな.....。ん〜、まぁ、ロイス頑張れ」
おい、父さん。見捨てんなよ!
「俺はもう行かないと行けないから」
「あー! 待って〜!」
俺は母さんの過激な愛情表現から逃げるために急いで家を出た。
はぁ。朝から疲れる....。そういえば今日はなんだか人がなんだか多い気がするな。何かあったっけ?
俺は歩きながら考えていると道行く人の会話が聞こえてきた。
「転生者様、もうこの世界に来られてそうよ!」
「でも転生者様をどこに召喚したかわからないんでしょ?」
「そうみたいだよね。でも近くにいるはずだから大丈夫よ!」
そうだ。今日はこの国に転生者が召喚される日か。
転生者は魔王が現れる度に呼び出されその魔王を倒しに行かせられると聞いたことがある。
確か前回は150年前とかだ。魔王を倒す為だけに呼び出される転生者は可哀想だな。
俺はそんなことを思いながらギルドに向かっていると道のど真ん中で盛大にコケている女の子がいた。
周りの人も何事かとその女の子を見ていた。
それよりなんで誰も助けないんだ....? よく見たら少し服もボロいし、もしかして難民か?
少しだけ女の子を気にかけたが変なことに巻き込まれるのは嫌だったのでその横を通りすぎることにした。
きっとみんなも俺と同じような理由で助けようとしないのだろう。
すると女の子は俺の剣を引っ張ってきた。
なんだ、なんだ。俺の剣が欲しいのか!?
「それ、弁当?」
あ、弁当が欲しかったのか。
「そうだけど....。欲しいのか?」
「うん!」
女の子は本当に弱ってるのかと疑問に思うくらいの元気な返事をしてきた。
俺は女の子に弁当をあげる前に一度中身を確認した。
げっ...。また肉が入ってる。
俺はそっと弁当の蓋をそっと閉じて袋に包みその女の子に渡した。
「ありがとう! あ、忘れてた!! 私急いでるから。それじゃあまた!」
そう言い女の子は再び走り出した。
「うわっ!!」
そしてまたコケた。
そこ、特にコケる要素ないだろ。
まぁ、とりあえずオリオのとこに急ごう。
俺は走ってギルドに向かった。
@ @ @
「ロイス、遅いぞ! 何してたんだよ」
「なんか倒れてる女の子が居てその子が弁当欲しそうだったからあげてた」
「ロイス....。お前成長したな....!!」
「なんでお前は泣いてるんだよ」
そんなことをギルドの入り口で喋ったあと中へ俺達は入っていく。
「ロイスさん! おはようございます!」
「アリアさん、おはようございます」
この人はギルドの受付のアリアさんだ。昨日はいなかったが今日はいるみたいで安心した。
「そうだ。ロイスさん、これ届いてましたよ!」
「なんですかこれ?」
「王城の招待状だそうです」
「はい?」
なんで俺に王城の招待状なんかが届いてるんだ?
なんかしたか? いや、多分何もしていない。
「なんだ、ロイス。なんかやらかしたか?」
「なんもしてねえよ!」
「きっと悪いことで呼んでいるわけではないと思いますよ」
「そうだといいんですけど」
俺はアリアさんから招待状を受け取った。
確かに裏面には俺の名前が書かれている。
俺は恐る恐るその招待状を開けて内容を確認した。
手紙には.....
『ロイスくん。これを受け取ったらとりあえず王城に来い』
もう怒ってるようにしか思えないんだが!? 絶対悪いことだろこれ。
もしこれで悪いことじゃなかったら悪意半端ないだろ。
「やっぱりロイス、やらかしたんだな」
「心辺りなんてないぞ」
「とりあえず行ってみたらどうですか?」
「わかりました...」
俺は王城に行くことにした。
「それじゃあ今日、俺は暇だからお前んちの本でも読んどくわ」
「俺んちは図書館じゃないぞ」
「いいだろ?」
「まぁ、いいけど。それじゃあ俺行ってくる」
「おう」
俺はギルドをあとにして王城に向かった。
はぁー。緊張してきた。何度か国王直接の依頼で行ったことはあるけどそれでも緊張するんだよな。それに国王があれだからな....。
てか俺本当に何もしてないよな。直近でやらかしたと言えば.....。まさか冒険者ランキングのことか!?
いや違うかもしれない....。でも他に思いつかないぞ?! やっぱりランキングのことか!?
色々な心配が積み重なる中、数分歩き俺は王城の前まで到着した。
「すいません。これを」
俺は入り口の前にいた騎士に招待状を見せた。
「ロイスベール様、お待ちしておりました」
そう言い騎士は門を開けてくれた。
そしてここから始まる階段地獄。ここの階段はなぜか無駄に長い。
作ったやつの悪意しか感じられない。
俺は文句を言いながらひたすら階段を上がっていき2分ほどしてようやく頂上に到着した。
もう魔法を使ってここに来たい...。でも王城敷地内は魔法が禁じられてるからそれも出来ない。不便すぎる!
「あ! ロイスベール様。お待ちしておりましたよ。さぁ、私についてきてください」
この人は国王の側近のジェイスさんだ。この人はしっかりしてていっつも優しいんだよな。
何も考えずにジェイスさんの後ろをついていくといつもなら個室の部屋に連れて行かれるのに今回は大広間に連れて行かれた。
「ここです」
そう言いジェイスさんが扉を開けるとそこには国王が既に待っていた。
なんか空気が重々しくないか? 俺断罪でもされんのか?
「ロイスくん! これからはパーティーを組んで魔王討伐に行ってもらうぞ!」
ん? 今この国王なんて言った? パーティー? 魔王討伐?
理解不能のフルコースだ。
「どういうことでしょうか?」
「とりあず入ってきてくれ」
すると大広間にもう一人入ってきた。
「さっきコケてた女の子!?」
「なんだもう知り合ってたか! なら話が早いな!」
その時いきなりその女の子は大きな声で「あ!」と言い出した。
「ロイスちゃんだ!!」
「ロ、ロイスちゃん!? なんで?!」
「だって弁当の袋に書いてあったよ」
あの表現過剰母...。いつから弁当の袋にそんなことを書いてたんだ。
「君達はこれからパーティーの仲間だから自己紹介して親交をとりあえず深めたりしといてくれ。それじゃあ私はそろそろ料理が出来る頃だから戻るぞ!」
「いや、ちょっと待ってください!」
「ちなみに今日は私の好物が出るんだ」
「知りませんよ、そんなこと!」
「んじゃ!!」
そう言い国王はどこかに言ってしまった。
やっぱりあのてきとうさはいっつも異常だろ。とりあえず何か話しとくか。
「あ、あの?」
「あ! 私は、
「俺はロイスベール。よろしく」
「ロイスちゃん、どうする?」
「それはやめてくれ!」
「じゃあ、ロイスくん?」
「それを君に言われるのはむず痒いから普通にロイスで構わないよ」
「わかった! ロイス、これからどうする?」
ロイスもやっぱりこの子に言われると違和感しかなかった。
「とりあえず弁当の箱も邪魔だし...。詳しく話したいことも聞きたいこともあるから俺の家に来るか?」
「行きます! 行かさせてください!」
そして俺達は家に向かうために王城をあとにしようとした。
「いてっ」
その女の子はよくわからないとこでまたつまずいていた。
「君、もしかしてドジ?」
「そんなことないよ!」
こうして俺は無自覚ドジの転生者と勝手にパーティーを組まされ魔王討伐するまでのなんとも疲れる新たな冒険者人生が始まった。
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