解決せよ。手段は問わない。
前日譚①
「それは良くない」
凛太郎の報告を電話で聞いた晶は目を覆った。暴力沙汰はまずい。相手の出方次第だが、部室の喫煙よりもよほどおおごとになる可能性がある。
「しかも、野球部の3年が康二の教室に来たらすぐに山岸さんが存在しないことがバレる。月曜日まで待っていられない。今のうちに何か手を打たないと」
榛菜もエプロン姿で考える。
「今のうちにかぁ。明日は日曜日……厳しいかも。でも、そんなに急がないといけないの?」
「はっきりと康二がこちら側にいることが相手に知られてしまう。3年の報復があるかも知れない。それに守るものが増えた。山岸さんが言う通り、凛太郎のお姉さんが巻き込まれると厄介だ。事情が事情だけに退学はないだろうが、停学くらいはあるかもしれない。彼女は内部進学ではないから内申に影響するとまずい」
「僕のせいで関係ない人が迷惑するのは、絶対に避けたい」
健流の言葉に晶たちも頷いた。それに、もう健流や康二だけの問題でもない。
「よくありませんね。灰野くん、女の子をそんな危険な目に遭わせる君にはもう少し言いたいことがあるけど、今は時間がないから保留しましょう」
「すみません」
老教授に頭を下げながらもずっと探偵ポーズをとっている。
「うーん」榛菜が焼きたてのクッキーを頬張りながら思案顔で唸る。
「思ったんだけどさ。日曜日に校長先生を呼び出したりできないの?」
「僕は個人的に校長先生の連絡先を知らないから難しいね。学校に聞こうにも土曜と日曜は事務は開いてないし。うーん」榛菜同様にクッキーを頬張って名誉教授が唸る。
「大久保くんにでも聞いてみようか。元教え子だから、彼の連絡先ならたぶんわかる」
「えっ」健流が声をあげた。
「その、学年主任の大久保
「……柳田の後輩の?」
晶と健流のやり取りに、老教授は不思議そうな顔をした。
「投書を横流しした先生というのは、まさか大久保くん? ……そんな子だったかな」追加でクッキーを口に入れて、もごもごと口を動かしながら、かつての教え子の様子を思い出しているようだ。
話が進まないまま、お菓子と珈琲だけが減っていく。榛菜が追加分の焼き上がりを確認しに出ていって、戻ってきた時に「じぃじ、煙草吸いながら電話してたよ」としかめっ
「ここに来るそうだよ、大久保くん」
「え!?」
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