転移直後
第2話
「あーよく寝た」
...ん?
眠りから醒めたぼくが瞼を開いて初めて見たのは寝室ではなく、美しい空と木々が生い茂る森でした。お日様がちょうど真上からこちらを見ています。
「え、なんで外?なんで森?」
もうパニックで頭が真っ白です。
「そうだ、これは夢だ。〈目覚めたらいきなり森の中、しかもパジャマ姿で〉なんて小説みたいなことがあり得r」
そういいながら頬をぶちますが、
「いっでえええ!」
「夢じゃないなら何なんだ?」
そういえば、ポケットにスマフォが入っていたはずです。確認してみると、そこには大きく圏外の文字が躍っていました。
寝ている間に遭難なんて、そんな馬鹿げたこと...
周りにここがどこかがわかる手がかりはないのでしょうか。場所さえわかれば取り敢えず大丈夫なはずです。
「ん、今気づいたけどここ道じゃないか?舗装されてないけど」
ぼくは、たまたま見つけた道を歩いていきました。
一時間ほど走って体力が限界に近付いてきたころ、人工の建物と思われるものがありました。ぜえぜえ。
「お邪魔しまーす」
恐らく誰かの家かなと思われます。埃を被り、ここ十年ほどは使用されていないようです。
「ここに家があるってことは、近くに集落があるんじゃないか?そこから警察に保護してもらおう」
目標が決まったぼくは、ここの家で勝手に一泊させてもらうことになりました。生活用具もそろっていて、遭難時の今にはこの上ない宿でした。
ふと近くの棚を見ると、そこにはボールペンらしきものと綴られた紙の束、そして鞘に入ったナイフが、置かれています。
「この三つ、拝借させていただきます」
確か、精神を安定させるには日記をつけるのが良いとおばあちゃんが言っていました。今はとても不安定なので、日記をつけてみようと思います。
その前に、ボールペンのインクが出るのかを確かめる試し書きをします。できるだけ字を綺麗に書きたいですし。
試しに〈ボールペン〉と書いてみました。うん、問題なさそうですね。
「ん?文字が...光ってる!」
その瞬間、インクが浮かび上がり...
ボールペンに、なりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます