効率重視の男、魔王に転生し世界を治める
ニガムシ
序章
1話 どうやら俺は魔王の子に転生するらしい
「もういいよ。俺がやっとくから他の仕事を片付けててくれ」
俺が彼にそう言ったのはもう何度目だろうか?社長の息子だからと会社に入った彼は入社して3年にもなるのに一向に仕事を覚えようとしない。さらに言えば俺が今やってるこの仕事も、1週間前に俺が彼に渡した仕事だった。仕事の量も特に多いわけでなく他の社員の半分もないくらいだ。
「残りの仕事は?」
「あと会計の仕事と…」
「終わった、次は?」
「えっと…」
「もういい、俺がやる」
「…はい」
本当に非効率的だ。それにしても、なぜ彼がイライラしているのだろうか?まぁ、いい。さっさと残りの仕事を片付けよう。
昼休憩
仕事も一段落したので昼をさっさと済ませよう。俺はカロリーメイトを取り出し…
「まーた、そんなもの食べて」
と声を掛けられた。彼女は
「
秋山先輩、俺の先輩だ。彼女の性格は…
「そんな物ばかり食べてちゃ、栄養が偏る。何処か食べに行こ!」
多少強引な性格をしている。しかし、意外と嫌いになれない人間だ。
会社を強引に出され、目的地を教えてもらえず仕方なく付いて行く。
「それにしても君は相変わらず凄いよね。仕事を2倍こなしながら後輩3人の世話をしてるって」
「凄くないですよ。後輩の教育も一人だけ完成できませんでしたし」
他の2人は人並みに出来るようになったんだが…
「あぁ、辻くんの事だね。確かに彼はやる気が無いからね。君とは真逆と言ってもいいだろう」
「ですが、真逆の性格だからと言って見捨てる訳にもいきませんから」
「まぁ、息詰まったら元教育係の私に相談すると言い」
「はい、ありがとうございます」
秋山さんのこういうところが嫌いになれないんだろうな。ある程度話したところで。
「あっ!先輩」
と後ろから声を掛けられた。
「おう、
俺の後輩の一人吉住だ。彼女は明るく3人の後輩の中で一番仕事が出来る子だ。
「珍しいですね。外で食べてるなんて」
「おいおい、吉住ちゃん。あまり彼に集中しすぎて私の姿が見えてないぞ」
「あ、秋山先輩。す、すいません」
たまにおっちょこちょいなところがあるが仕事でそのミスは見れない。
そして、秋山先輩がニヤニヤと笑い
「吉住ちゃん、昼はもう食べたかい?」
「は…」
「まだだよね、じゃあ一緒に食べに行こうか」
強引だな、本当に。あぁ、でも付いてくるって事は食べてないんだな。ちょうどいいだろう。
3人でゆっくり話し、ある程度歩き、俺たちは信号で止まった。
「もうすぐ着くよ。私のお気に入りの店だ。楽しみにしたまえ」
本当に秋山さんは楽しそうだ。しかし、
ドンッ‼
と俺の体が前に倒れる。誰かに突き飛ばされた。更に、横からトラックが来る。死…いやまだ助かるな。トラックの車高が高くこのまま地面に倒れこめば頭は守れる。せいぜい足の骨が折れるぐらいだろう。だから大丈…
「キャッ‼」
と後ろから吉住も倒れてきた。誰かに押されたのだろう。
さて、これは緊急事態だ。どうするか俺が助かろうとすると吉住はトラックに跳ねられ死ぬ。…いやこの選択肢は駄目だな。仕方ない。
俺は体を反転させ吉住の頭を持ちトラックの車高より下に持っていく。その反動で俺の頭は車高よりも高くなり、景色が真っ暗になった。
真っ暗な世界、もう1時間23分経過した。ずっとこのままなのだろうか?
そして、30分が超えようとしたころ
「目覚めなさい」
その声で俺の視界が一気に明るくなった。広がる水平線、ここが俗にいう天国ってやつか?
「こんにちは。
そして、目の前には背中から白い羽が生えた女。…なんというかコスプレにしか見えないな。
「私の名前はサラティナ、女神です。いきなりこんな事を言われても信じないと思いますが貴方は死んでしまったのです」
とコスプレ女は可愛そうなものを見るような目で俺を見ながら言った。
「ですが、安心してください。貴方の…」
しかし、それにしても。
「長い」
「えっ?」
「話が長い。さっさと用件だけ話せ」
その瞬間、女神の目から光が消えた。怒ってるわけではない…仕事をする人間の目だ。
「では、このくじを引いてください」
箱を出され手を突っ込む。そして、中から紫色の紙を取り出す。女神に手渡し、中を見る。
「あぁ、はい。サムスワールドの魔王ですね。では、記憶の消去はありません。そこの魔法陣に乗りください。では、新たなる人生頑張ってください」
最後だけ眼に光があった。彼女はプロの様だ。それにしても、魔王か。昔、友人から貸してもらった本で少しだけ読んだことがあるな。最終的に勇者にやられるとこしか読んだことが無いが関係ない、最終的に俺が快適に暮らせる理想的な場所に作り替えればいいんだ。
そして、俺の体は光に包まれた。
「ふう、今日はあと何人だろう?」
先程の男を世界に送り、少し休憩をとる。紙を見ると今日は後20人程、世界に送らなければならないようだ。
それにしても、やりやすい人だった。最近はずっと喋ってくる人や自分の死を受け入れれなくて発狂する人、ナンパしてくる人ばかりで大変だったのだ。あぁ、やってすぐ理解して動いてくれる人はありがたい。
「サラちゃんサラちゃん」
「どうしました。ジュリアさん」
休憩してると先輩女神のジュリアさんがやって来た。
「さっきの人だけど何も説明しなくても良かったの?」
「あぁ、そのことですか。大丈夫ですよ。彼の記録を見る限り適応能力や飲み込みの数値が異常なまでに高いですから」
私はレーダーチャートを見ながら答えた。
「でも、あの世界は魔法とかもあるし…」
確かに現代の人間に剣だの魔法だのと言っても普通の人間は適応できないし使えないだろう。しかし、彼は値は違う。
「彼の能力値は現代人のものじゃないですよ」
適応能力・状況把握・理解力がカンストしている。それに、魔王の血が混じるのだ。
「まぁ、見てて下さい。面白い世界が出来ますから」
「それってサラちゃんの勘?」
「はい」
「そっか。おっと、そろそろ行くね」
ジュリアさんはそう言うと持ち場に戻った。私も次の人を転生させないと。えっと、次の人は…死因が自殺か…発狂する人間じゃないといいけど。
「目覚めなさい。こんにちは
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